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異業種格闘技の起きやすい業界(3)

消費者を向いていない業界あるいは消費者に満たされていないニーズがあっても解消されていない業界には、その隙を狙って新しいプレーヤーが異業種格闘技を仕掛けてくる。
たとえば古い話で恐縮だが、かつてほとんどのスーパーや食料品店はどこも朝10時頃から夜の6時くらいまで営業をしていた。消費者もそれが当たり前と思っていたところに登場したのがコンビニエンスストア(CVS)であった。CVSは朝7時から夜11時まで営業し、かつ駅とか商店街の真ん中の行き来に便利な場所に立地していた。価格は全然安くなかったけれど、朝の通勤・通学前の客のニーズや夜遅く帰ってくる勤め人のニーズをたちどころにつかんで大きく発展したのは皆さんのよく知っているとおりである。当時のスーパーから見ると、価格は定価で安くない上に品揃えも店の大きさからして自分たちの何分の一もないのに、なぜあんなにはやるのか理解できなかったに違いない。そのうちCVSは24時間営業まで始めて、全く異なる業態へと変化してしまった。対抗しようにも、価格が安いわけではないので値下げするわけにも行かず、品揃えでも負けようがなかったので、どう戦って良いか分からないうちに気がついたら負けていたというのが本音だろう。消費者の距離や時間に対する利便性のニーズが高かったのに気づかなかったわけである。
そのほかの例としては、ガリバーによる車買い取りビジネスもあげられる。それまで、自分の乗っていた車を売るとしたら、中古車専門店に売るか、新車購入時に下取りとしてディーラーに引き取ってもらうのが普通であった。どちらの業態も車を売るユーザーを向いていたとは言えない。まず中古車専門店であるが、普通のユーザー特に女性客が入るのには敷居が高く、専門知識がないと相手にうまく丸め込まれてしまうのではないかと思わせるような雰囲気があった。また彼らが車を買い取るのは、買い取った車を商品として再度販売するのが目的であるから、なるべく安く買って、出来るだけ高く売ろうというのが理にかなっている。一方で、新車ディーラーもあくまで目的は新車を買ってもらうためであるから、どちらかというと仕方なく中古車を買い取るという感じになるのは無理なからぬことである。こうした状況が、車を売る人に高い満足度を与えていたとはとうてい思えない。そこでガリバーが考えたモデルが、買い取り専門店である。買い取りが専門であるから、車を売ってくる人が唯一の顧客であり、大事にせざるを得ない。さらに、買った車はオークションなどの専門業者に即売ってしまうので、在庫のリスクなどもなく、市場で売れる価格から儲け分を引いた価格で仕入れるという仕組みを考案することで、透明性の高い価格を実現した。それは一般的に中古車販売専門店やディーラーの買い取り価格より高い価格である。結果として、消費者からは高く買ってくれる上に、価格の透明性が高く安心であるという評価を得るようになった。

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