昨日と同じ本からの抜粋である。p68に以下のようなくだりがある。「お客さまとセールスマンという立場をわきまえた上でのことですが”対等な目線”で接するというのが、もっとも大事だと思っています。
メルセデスという車が、頭を下げてまでして売るような商品ではないということも大きく働いているのでしょうが、それ以上に、私には、お客さまよりも車に精通し、その方の好みにあるメルセデスを提供できる自信があるからです」
また、別の箇所に「・・・媚びを売れば売るほど、お客さんとの関係は離れていってしまうもの。使い走りになってしまっては、いい付き合いはできない。礼儀も尽くしますが、どんな人とでも、同じ目線で、ということを肝に銘じていました。」(p161)とある。
どちらも車のセールスマンだからといって相手に卑下することなく、顧客と対等な立場で接することが顧客のためにもなり、関係も長続きするというメッセージである。
実は、全く違う文脈から私も似たようなことをコンサルタントに言い続けてきました。それは、顧客と接するときに、「顧客とは同じ目線で話をせよ、ただし視座は高く、視野は広く」というものです。私が視線を顧客と対等にといっているのは、コンサルタントは放っておくと自分が偉いと勘違いして、本人は意識していなくても顧客を見下す態度が相手に分かってしまうことがある。こうなるとうまくいかない。顧客と長続きする関係を続けたければ、顧客と同じ目線でものを見る、すなわち顧客と同じ感覚で課題を理解する、人々の悩みを感じ取る、実行の困難さに気づくなどが重要である。
しかし、これだけで終わってしまっては、彼らの同僚や友人と変わりがなくとても高い金は取れない。コンサルティング料を高くないと思ってもらうためには、顧客よりもっと高い視点でものを見る力が必要である。それによって顧客が毎日の仕事に埋没しているところから助け出すことのできるものの見方や解決策を提供できる。ただし、し、その場合も単に高い視点だけでなく、前から、後ろから、横から、斜めからといったように幅広い視点での見方、すなわち広い視野が必要となる。
こうした私の考えは汎用性があるなと裏付けることがで来た点でも価値ある本でした。
これ以外にも「セールスマンが自分に投資したり、努力したりすることは、とても大事なことだと思っています。そこには一切の無駄はありません。」(p45)とか、「客にとってのサプライズとは、その人が予想していることを、少しでも超えたものを提供したときに、感動し、満足してもらえたかどうかにかかってくる。」(p56)など、大変参考になるコメントが載っている印象に残った本でした。もっと詳しく知りたい方は是非、現物をお読みください。
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お客さまと同じ目線は、私たちの仕事でも本当に大事なことだと思っていました。最近風姿花伝を再読しました。最高の能、狂言を将軍の前で舞うためには厳しい稽古は当然だとしても自分のシテとしての力を磨くには傲慢も卑下もいけない。ただ一点「よりよきものを」の気持ちで稽古をすることだと教えています。これがお客様と同じ視点でものを見ることに通じるのではないかと思っています。よいものが欲しい、よいものを使っていただきたいとの考えが「同じ視点」を作ることになるのでしょうか。風姿花伝にはこうありました。
「上手にもわろきところあり、下手にもよきところは必ずあるものなり」です。まさによいものを求めていく最高の考え方ではないでしょうか。
風姿花伝は勉強不足で読んだことがないので、機会を見つけて勉強してみます。
目線、視線、視点、視座、視野いずれも経営には重要な含蓄の深い言葉だと思っています。