20の引き出しのフォルダ解説のリクエストシリーズで、今回は「柔らかなリーダーシップ」である。これはまず、私の造語である。
通常、優れたリーダーシップといえば、クリアなビジョンを持ち、強力な力で組織を引っ張っていくカリスマ型の豪腕なイメージが強いと思います。これをカリスマ型リーダーまたは鋼のリーダーシップと呼びます。
例えば、日産自動車のカルロス・ゴーン、トヨタ自動車の奥田碩(前経団連会長)さん、GEの前会長ジャック・ウェルチなどマスコミに多く登場する経営者はほとんどがこのタイプです。
もちろん、企業存亡の危機にはこうした危機脱却のためのカリスマ型リーダーの必要性は否定しないが、私はあえてカリスマ型リーダーに異を唱えている。というのも、カリスマ型の経営者というのは、在職中は良いがその後に反動が来たり、大きな環境変化があったときの対応に問題があるような気がする。強引なリーダーシップで企業を大きく舵取りした結果、そう簡単には反対側に旋回出来ないのである。あるいは強いリーダーシップほど、ぽっきり折れてしまう可能性が高いと見ている。
代わりに、カリスマ型リーダーシップでないリーダーシップを「柔らかなリーダーシップ」と呼んでいる。
今日のように、環境変化の大きさとスピードが激しく、先が読めない時代には、カリスマ型の強引なリーダーシップより、実は風にそよぐ葦のような柔軟でかつ倒れそうで倒れないリーダーシップスタイルが求められていると思っている。
要するに、自分でがんがん主張し、強引に組織を引っ張っていくのではなく、人の話はよく聞くし、人にやらされ感を与えない。しかし、自分の信念はしっかり持っていてなかなかあきらめない。土俵際で踏ん張る貴乃花(先代)のようなリーダーである。そして、結局自分のやりたいことを実現してしまう。別の言い方をすれば、「お釈迦様の掌型」で人をリードするタイプとも言える。
こういうタイプのリーダーは目立たないし、マスコミ受けもしない(記事になりにくいということ)あるいはマスコミを避けているので世間に出てこないが結構いる。企業で言えば、エーザイ、一部の総合商社、リクルート、ユニ・チャーム、長島・大野・常松法律事務所などトップが前面に出てこなくても、組織に活力があり、業績が良い企業はその可能性が高いと思う。
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