先日(3/7)の日経新聞に、
「個人の資金貸し借り、ネットで仲介
英ゾーパ、日本進出
10月にも事業開始」
という小さな記事が載っていた。
一言で言えば、小金を貸したい個人と小金を借りたい個人を仲介する事業である。
個人的にはこれは大きな流れになるのではと思っている。
問題は、
1)資金の出し手がいるか
金を貸してみたいという個人がたくさんいなければ成り立たない
大口投資家であれば一人でも良いが、何千人・何万人という個人投資家を集めて初めて成り立つビジネスである。
2)借り手がいるか
いくら貸し手がいても、ネットで借金を申し込む人がいないと話は始まらない
3)焦げ付きのリスク
貸し手が個人なので、元本が毀損するようでははやる可能性はない
4)事業主(仲介者のこと)がsustainableか
事業として、継続可能で利益を上げることが出来なければ長続きしない
1)の貸し手については、銀行に預けても、コンマ何%しか利子が付かない。一方で、株式投資や不動産はリスクが大きい。あるいは元手として大金が必要である。
わずか数百万円の金でも有利に運用したいと考える個人は多いはずだ。したがって、貸し手には困らないはずだ。
細かい解説は省くが、ネットの特性を利用すればこうしたPtoP(ピアツーピア:個人間の直接取引、CtoCとも呼ばれる)は十分ビジネスとして成り立つと思う(注)。すなわち、4)は問題がなさそうだ。
問題は2)だが、我が国では個人のちょっとした借金は消費者金融とクレジットカード会社に限られ、銀行から直接借りる手段はきわめて限られる。住宅ローンや車のローンのように担保があったり、使途がはっきりしたものは銀行でも借りられるが、用途が不特定のローンはあまり普及していない。となると十分ニーズはありそうである。後は消費者がこうしたネット上の取引をどれくらい敷居が高いと感じるかであるが、少額であれば十分可能性があるのではないか。
3)の焦げ付きリスクであるが、これは正直どれくらいになるか分からない。
新聞記事ではイギリスの場合は貸し倒れ率は0.1%くらいと書いてあるが、日本ではこの率は難しいのではないか?しかし、0.5~1.0%位でとどまるのであれば十分成り立つと考えられる。
もちろん、個別の焦げ付きに対する対策は別途必要で、本家のゾーパでも分散貸し出し、保険制度の導入でこうしたリスクを低減しているようだ。
貸し手にとってどれくらい有利な投資になるかであるが、銀行預金や債券投資よりリターンの良い投資ではあるが、イギリスの場合は貸出金の上限が500万円くらいにセットされているので、これで大金持ちになるのは無理だ。
(注)もし、PtoP型の事業について興味がある方は、私の書いた「CtoCの仕組み革新-バリューチェーン型からネットワーク型へ:eBay-」という記事を参照ください。
eBayを事例にコミュニティ型のビジネスがなぜ有望で、どのような競争原理になるのかを取り上げています。
嶋口充輝編「仕組み革新の時代」有斐閣の第8章p211に載っています。
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