ブログ

異業種格闘技の起きやすい業界(4)

4つめは非効率な機能を保持したままの業界である。
これだけではわかりにくいと思うので、もう少し具体的な例で言うと、たとえば生鮮食品流通の世界に異業種格闘技が起きている。
まず、これまでの生鮮商品流通といえば、生産者の生産物を農協などの生産者代表がまとめて、大都市などの消費地にある生鮮市場(青果市場や魚市場など)に送り、それを仲買人などの卸業者が取り扱い、そこからはじめて小売店に送られる。当然ながら、こうした多段階流通は結果として余分なコストがかかったり、輸送に時間がかかることも多いので、購買力のある大手小売店などでは産地と交渉して、直接取引を行っているところも多い。ダイエーなどは自社で牧場まで所有していた。その結果、産地直送によりコストが安くなるだけでなく、時間も早くなって鮮度も保たれる。小売店が従来の生鮮品流通ルートを全く通さない流通形態を実現したという意味で、異業種格闘技である。
一方で、宅配便の普及により産地の方が既存の流通をすっ飛ばして直接消費者に販売する動きも加速されている。いわゆる宅配便を使ったうまいもの便や郵便局が取り扱っている各地の名産品の産地直送便である。生産者が流通(卸・小売りの両方)を省いて、直接消費者へ届ける形の異業種格闘技である。
こうした流通段階での無駄を省く動きはこれまでにも盛んに行われていたが、ここへ来てインターネットの発達がさらにユニークなビジネスを生み出している。従来は地元の客かそこへやってくる観光客くらいしか相手に出来ない地方所在の小売店がインターネットのおかげで突然販路を全国に広げることが出来るようになった。とりわけ楽天の存在がこの動きに拍車をかけることになったのは皆さん知っての通りである。もちろん消費者にアピールできるユニークさ(味、価格、アイデアなど)がなければ成り立たない話ではあるが、零細地場小売店が全国区に名乗りを上げたという意味ではこれも立派な異業種格闘技である。

関連記事

  1. 消費者主権主義
  2. ゲームチェンジャーの競争戦略発売
  3. セブン銀行は銀行か?
  4. ベンチャー企業は既存企業からなぜ嫌がられるのか
  5. 経済教室
  6. 異業種格闘技の事例(1)
  7. 業界地図が塗り変わる旅行業界
  8. ZillowについてのJさんからのコメント

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

RSS 内田和成のビジネスマインド

  • BCGのコンセプト紹介の本を書きました 2016年11月3日
    今年2016年は、BCGが東京に世界で2番目のオフィスを1966年に開設してから...
  • 事業アイデアの発想法 2016年10月28日
    今日はビジネススクールの内田ゼミにBCG時代の同僚で現在事業開発のコンサルタント...
  • 学部7期生 2016年7月8日
    今日の合同ゼミには学部7期の卒業生の中澤君と薬丸さんも顔を出してくれました。明日...
  • ゼミ合宿 2016年7月8日
    今日は内田ゼミのMBA生と学部生の合同ゼミ初日です。例年土日の一泊二日でやるので...
  • 模擬授業のお知らせ 2016年7月6日
    来る7月24日(日)の午後、早稲田大学ビジネススクールでは2017年度の入試説明...
PAGE TOP
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。