私のとっておきの情報活用術を紹介しよう。『20の引き出し』である。過去20年近くやっている方法で、とても役に立っている秘蔵中の秘蔵のノウハウであると本人は信じている。
ただし、お断りしておくと、いくら人に話してもあまり受けない。理由は分からないが、そんなことが出来るのが不思議でとても無理と思うのか、やっても役に立ちそうにないと思われるのかのどちらかであろう。
でも自分ではこれが一番と思っているの紹介する。20の引き出しとは、頭の中の仮想の引き出し(キャビネット)のことである。この引き出しの中にはさらに1つにつき20くらいのフォルダ(ファイル)が入っている。ということで、計算すると20×20=400くらいのファイルが頭の中に収納されている。
一つ一つのファイルの例をあげよう。たとえば「オフトの牛」というフォルダがある。これは「リーダーシップ」という引き出しの中に入っているネタである。どんなネタかというと、ハンス・オフトというサッカーの元日本代表監督の書いた日本サッカーの挑戦という本の中に、こういうくだりがある。リーダーにとって大事な能力に先見性がある。ただし、これは勘ではない。経験に基づいた科学であるといっている。
そしてその具体例として、向こうから牛の行列がやってきたときに、その顔だけ見て、その牛のしっぽがどんな形をしているのかを当てるのが先見性だといっている。牛が通りすぎた後で現物のしっぽを見て言うのは、誰でも出来る。リーダーはそれではダメだ。顔の形の特徴を見ながら、顔の形としっぽの形の因果関係を見つけ出すのが、先見性だ。もちろん最初は当たらない、しかし何度も繰り返す内に分かるようになると主張している。オフトの主張によれば、リーダーの先見性は観察と検証によって学習できるとしているが、全く同感である。
このネタはどこで使うかと言えば、経営者とリーダーの資質について話をするときや、先行き不透明な時代に必要な先見性をどう身につけるか、「先見性は先天的なものか後天的にも身につくか」、「勘か科学」かなどを議論するときに引っ張り出して使う。
しかし、この話は同時に仮説思考そのものでもある。故に同じ話が「仮説思考」の引き出しにも入っている。こちらでは仮説思考をどうやって身につけるか、あるいは仮説構築能力は先天的なものかどうかの議論で使用する。
これがバーチャルなファイリングの良いところである。ネタは一つでも、いくつもの引き出しに使えることがある。
とりあえず、今日はここまで。
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内田さん
さすがです。多くの引き出しを持つと、色々な場面で役立ちます。特に「失敗」の経験を持っていると、更に、先見性に役立つように思います。
沢田さんへ
コメントありがとうございます。
この後に引き出しの例と貯め方を紹介しようと思っています。
今日は嶋口先生の退任記念パーティーです。
ボストンコンサルティンググループ内田氏の記憶術
ボストンコンサルティンググループで2004年末までまで日本代表を務られ、現在はシニアヴァイスプレジデントとして働かれている内田和成氏のブログがあります。
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