経営者にとって大事なスキルに潮の流れを読むことがある。
今が自社にとって順風が吹いているのか、あるいは逆風なのか。それによって打ち手は変わってくる。順風であれば、少しくらいのリスクをとってもうまくいくことが多い、仮に外れてもケガが少なくて済む。一方で逆風の時は、下手にリスクを取ると裏目に出ることが多い上に、その損害に耐えられないケースも出てくる。いわゆる弱り目に祟り目のケースである。
しかしいつも自分だけ順風と言うことはない。そうしたときによく使われる手が他の勝ち馬を見つけてそこと一緒にやる、あるいはおこぼれ頂戴の作戦である。カジノなどでも自分は直接賭けないのに、ついている人に相乗りして賭けている本人よりもっと稼ぐ輩は一杯いる。
何も恥ずかしがることはないが、このやり方はみみっちいと言えばみみっちい。でもマイクロソフトがIBMのPCという勝ち馬に乗っかってそのオペレーティング・システム(OS)であるMS-DOS(後のWindows)を大成功させた例などを見れば、とても小さい話とは言えない。(その時勝ち馬だったはずのIBMがPC市場から事実上退場し、逆に負け馬だったアップルが今や別の事業で勝ち馬として市場に戻ってきたのを見ると歴史の不思議さを感じざるを得ない。大げさかな?)。また、トヨタ自動車の躍進とともに業績を上げている部品メーカー、シャープの液晶テレビ用に部材を供給して成功している印刷会社なども勝ち馬にうまく乗った企業と言えるかも知れない。
経営をギャンブルと同じように考えて良いかと言えば、教科書的にはもちろんノーである。しかし、これまでに何百人という経営者と直接接してきて言えることは、人にも企業にも運というものは存在して、それをうまく利用するかしないかで結果が大きく変わるということである。別の言い方をすれば、自分がついているかいないかをはっきりとらえることは大事であり、自社がつきあう企業に運があるかないかも大事な要素である。もちろんツキだけで経営をするのは間違っている。経営の意思決定には原則があり、科学性がなくてはならない。しかしである、最後はやっぱり経営者のエイッ・ヤーがカギを握っていると思う。
こうした非科学的な要素と経営をどうリンクさせていくかが当面の私の研究課題である。
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先生から「運」の話を聞くとは思いませんでしたので、正直ビックリです。
「運を味方に」とか、「ツイてツイてツキまくる」などの啓蒙書もよく見かけますが、先生は「運」や「ツキ」といったものは、呼び寄せられるものだと考えますか?もし、呼び寄せられるものだとしたら、どんな要件が必要なのでしょうか?
昔読んだ本に「運とかツキといったものは「他人」が運んでくる。だからツイている人と付き合え!」と書かれていました。少々観念じみていますが、なかなか真を突いているのでないでしょうか。
「運」「潮目」「勝ち馬」などは結局、参入しているUncontrolableな市場の動きに関連したところの話ではないのかなと思います。極論かもしれませんが、戦略(Control可能な要素)は市場のダイナミックな流れ(Uncontrolableな要素)を凌駕してまで効果発揮できないことを意味しているように思えます。特に短期的な視点ではそう思え、戦略の巧拙は長期的にわずかに競合より優位にたっていれるかどうかではないかと思います。うがった見方かもしれませんが。
名無しさんへ
今回は運の話をするつもりはなかったのですが、筆が滑りました。しかし、経営者あるいはビジネスマンにとって、「運」とか「ツキ」というのは大事な要素だと思います。
昨日のカンブリア宮殿で日本レストランシステムの大林会長がおもしろいことを言っていました。私もよく知らなかったのですが、レストラン業界で脅威の20%+の利益率を誇る会社のトップだそうです。
要約すると、経営者にとって「運」というのは大事な要素である。もちろん運を操作することは出来ないが、幸運の女神がいやがるようなことはしてはいけない。
司会の村上龍(もしかしたら小池栄子の方)が、女神がいやがることってどんなことですかと尋ねると、「ジェット機買って、きれいな女性を連れてどこかへ行くようなこと」と答え、さらに女神が喜ぶことってどんなことですかとたたみかけると、照れながら「親孝行」と答えていた。すごく印象に残った。
M5同級生さんへ
運とか潮目というのはまさにuncontrolableなものでしょうね。しかし勝ち馬については、選択できるという意味でcontorableではないかと思います。それについてはさらに勝ち馬について書きますので、そちらを見ていただければと思います。
一方で、
>極論かもしれませんが、戦略(Control可能な要素)は市場のダイナミックな流れ
>(Uncontrolableな要素)を凌駕してまで効果発揮できないことを意味しているように思えます。
というのは、そのとおりですね。
戦略というのは所詮与えられた前提条件の中で最善を尽くすということであり、その前提条件が変わってしまえば、通用しなくなると思います。
「運」は大事です。「つき」も大事です。
しかし、その流れをどのように活用できるか、
経営のポイントのような気がします。
「運」がいいときと悪いとき、それぞれあるが、
そのときになにをするか?何をしないか?
今、株で損しているから、他のことは運がいい。
このくらいに考えておこう。
花田さんへ
運の話題はずいぶん盛り上がるようですので、改めて取り上げるつもりです。
私自身は自分の運はコントロールできないものの、他人の運やツキは何となく分かるかなという気がしています。
また自分が運が良いかどうかも分かりませんが、自分がつきあう人には運を与えられると信じていますし、そのように努力しています。