コンサルタントに勧める2冊目は、茂木健一郎さんの「脳」整理法である。
これは、ノウハウやスキルを書いた本ではなく、コンサルタントの立ち位置や価値について考えさせてくれる本である。ちくま新書として2005年に出版されている。
p134に「自分」を離れて世界を眺めるという節があり、その中にこんな一文がある。
「科学的世界観とは、理想的には、あたかも「神の視点」に立ったかのように、自らの立場を離れて世界を見ることによって成り立っています。そのことを、科学者たちは、「ディタッチメント」を持って対象を観察する、と表現します。」
企業の問題点を整理することを「論点整理」と言うが、その際に当てはまる考え方であり、まさにコンサルタントが持つべきスタンスを表した言葉である。もっと分かりやすく言えば、コンサルタントの持っている岡目八目的要素の重要性を語っている。
茂木さんも、「ディタッチメントは、科学者に限らず、複雑な現代について自分の脳を整理し、活用していこうというすべての人にとって、大変参考になる考え方なのです。」と述べている。
p74にある「不確実性を楽しむという「生活知」は、そもそもこの世界の本質、とりわけ生の本質は「偶有的」なものであり、不確実性は避けられないものであるという認識のもと、「覚悟」を決めることによってこそ得られるものである。」という一節もまたコンサルタントの生き方を示唆している。
これ以外にも、偶然が幸運に出会う能力として、セレンディピティという言葉があるが、それを偶有性の視点で詳しく解説している箇所には、学ぶべき点が多い。
私がこの本で一番興味を持った部分は、世の中には必然でもなければ、かといっても偶然でもない、その中間の領域というのがあり、それを偶有性と呼ぶが、まだまだ解明されていない領域であり、だから人間なんだというところである。さらに、これは私の解釈であるが、偶有性は個人だけでなく、企業や戦略にも全く同じように使えるなということである。
学生時代に読んで大変感銘を受けたというより自分の生き方に大きな影響を与えた、ジャック・モノーの「偶然と必然」という名著も思い出した。当時の言葉を使えば、かぶれたといっても良いかもしれない。
最後におまけのひとこと。
茂木さんといえば、NHKテレビの『プロフェッショナル 仕事の流儀』のホスト役で活躍中であるが、この新書の裏表紙にある茂木さんの写真は、えらく痩せていてテレビで見る茂木さんとは別人のようである。それだけでも見る価値がある新書である(笑)。
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コンサルタントになるための1冊として、最近、出版された内田先生の著書「コンサルティング入門」(ゴマブックス)を、自著を宣伝なさらない謙虚なお人柄である内田先生に成り代わり、僭越ながら推薦させていただきます。
この本は、今まであまり知られていない経営コンサルタントの本質や実像が、明らかにされているだけでなく、プロジェクトにおけるマネージャーの役割などが、BCGのマネージング・ディレクターによって、実体験を通じて詳しく語られています。
今後、経営コンサルタント目指す人のみならず、多くのビジネスマンにとっても、経営コンサルタントのスキルや考え方を学べるなど、日々の仕事の中で役立つこと間違いなしの良書です。
私もこの本を通じて、多くの示唆をもらいました。皆様もぜひ一度、読んでみて下さい。
余計な話ですが、上記植木さんが紹介された「コンサルティング入門」については、先日、BCG Japanのホームページにて目次を見ていました。が、大前研一さんの「企業参謀」と「続・企業参謀」(もう読んだのです)とある程度似ていると思って、買うかどうか躊躇しています。
失礼ながら、その本について内田さんに2つを伺いたいと思います。
ひとつは、他のコンサルタントが書かれたコンサルティング入門書(例えば大前さんの 「企業参謀」)に比べれば、どこが違うでしょうか。
もうひとつは、御前著「仮説思考」に比べれば、その本は一番区別できる特徴が何ですか。一番発展したviewpointは何でしょうか。
植木さんへ
拙著の紹介ありがとうございます。
テレビの番組の焼き直しですので、敢えてここで紹介するほどのものではないかと思ったものですから。
いずれにしても、褒めてもらって感謝しております。
崔さんへ
この本は、大前さんの企業参謀とはだいぶ性格が違います。どちらかといえば、コンサルタントの心構え的な部分が売りです。ただし、前半部分は、仮説思考とはダブっているところが多いです。
読んでいただくのが一番と思い、そちらへお送りしますから、楽しみにしていてください。
そして読み終わったら、また感想など聞かせてください。
内田さんへ
わざわざすみませんが、お楽しみにしております。