コンサルタントを目指す人への3冊目は、二宮清純著「勝者の思考法」(PHP新書)である。一言で言えば、プロフェッショナルのなんたるかを教えてくれます。
この本にはスポーツに関する日本人の勘違いや感情をベースにした議論を木っ端みじんにしてくれる気持ちよさがある。そして、また人生のヒントにもあふれた本である。
日本人は弱者と敗者を同情的な視点で同一視しているが、これらは別物であり、弱者には理解と配慮が必要であり、敗者には復活のチャンスを与えるべきだと主張している。その通りである。日本人はつい敗者に同情しがちで時にそれを美化さえする。しかし、それは間違いであり、負けは負けであると認識するところから、真の進化が始まる。サッカーのワールドカップ出場を逃した試合を「ドーハの悲劇」と言っているのがよい例である。
一方で著者は弱者がどうしたら勝者になれるかについても考察している。「凡」から「非凡」を引き出す魔術といった思わず読んでみたくなるタイトルがついている。
さらに、5章の「勝者の思考法」のp181にはこんな一節がある。
FWとして大成するのは、例外なく強烈な構成を持った人材である。極端に言えば、「右向け右」と言われたときに左を向くような感性が、ゴールを決めるに際してイマジネーション豊富なプレにつながるのだ。(途中略)組織の中に乱気流を巻き起こすような存在。指揮官にすれば扱いにくい存在であるが、しかしそうした個性は強い組織作りに逆行するものではない。
あるいは別のところでこんなことも言っている。
サッカーのゴールについて、「予定通りのことをしていてもゴールは奪えない。ゴールを想定してディフェンスの練習をするのだから、当然のことである」。ではどうしたら、ゴールが奪えるのかと言えばアイデアと決断力だという。
私が大好きなコメントであり、コンサルタントもかくあるべしと思う。言われたことをこなすことが身についた人々には耳が痛い話だろう。
また、同じく5章のp202には、「勝負師とギャンブラーの違いがここにある。ギャンブラーは運を天に任せるが、勝負師は最後まで自分で運を仕切ろうとする人種のことを言う。」なんてしゃれた文章が載っている。この言葉を何人の経営者に贈ったことだろう。
そんな彼が、さんざん勝負に勝つ方法について語りながら、「ゲームの勝者が人生の勝者とは限らない」と言っているところがまたいい。
リーダーシップ論、コンサルタントの心構え、若手コンサルタントの育成方法について学べる名著である。
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ほぼ日刊イトイ新聞にフィリーズの田口選手のインタビューが載っているのですが、これが私には結構面白く、「野球監督の話つながり」ということで投稿させて頂きました。
URLはこちらになります。
http://www.1101.com/taguchi_2009/
選手に考えさせる、というあたり、なんとなくジーコ監督を思い出しました。
K.T.さんへ
ほぼ日刊イトイ新聞の田口選手と糸井さんのインタビュー記事読みました。イヤー、確かにおもしろいですね。
チームが腐るとか、強チームには必ずしも成績と関係ない尊敬されるリーダーがいるとか、企業とまるで同じですね。
情報、ありがとうございました。