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成熟市場の活性化

Wii & DS その後

本日の日経新聞朝刊に日本のゲーム市場(上半期:4-9月)が前年度に比べ22%増の2900億円強になったという記事が出ていた。内訳はハードが1380億円、ソフトがそれを上回る1540億円となっている。好調な理由が主に任天堂のWii(ウィー)と携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」にあることは、皆さんの想像通りである。

2-3年前まで国内ゲーム機市場は成熟市場どころか、若年層の減少やPCのゲームや携帯のゲームが普及することで、衰退市場だと言われていた。それが今年は過去最高だった昨年を上回る勢いと言う。
これがどうして、一転成長市場に様変わりしたかと言えば、ひとえに任天堂の開拓した新市場によると言うことが出来る。従来型のゲーム機(例えばプレイステーションやゲームボーイ)ではなかなかソニーに勝てない中で、彼らが考え出したのが、あるいは窮余の一策と呼ぶべきかもしれないが、これまでゲームをやっていなかった層にスポットライトを当てることである。とりわけ中高年と女性というのは、これまでのゲーム機市場では全く相手にされていなかったセグメントである。その結果の大ヒットが「脳トレ」だったのは皆さんもよく承知の話である。このあたりはPS3とイノベーターズジレンマの項も参考にしてください。

さて、今日の本題は成熟業界や成熟市場で悩んでいる企業の方が、再度企業を成長させようとするときにどんなオプションがあるのかということである。
一つ目は新規事業を始める。但し、自社にとって新規でもその分野に既に前からいる企業にとっては既存事業なので、成功確率は低い。
二つ目は海外進出である。これも不慣れな海外に行っても、既にいる企業と戦うことになり、しかも仕事の進め方、すなわち業界の慣習や法律・文化などが異なるので、結構苦労する。しかし、日本のメーカーの多くはこのパターンで成功してきている。造船・鉄鋼・精密機械・電気・自動車など皆このパターンである。
三つめは、M&Aである。成熟市場で過酷な競争を展開しているより、競合と一緒になった方が企業規模も大きくなるし、競争も一時的に弱まるというわけである。しかし、この考えは顧客(市場)のことを無視しているので、長い目で見て本当に成長できるのかは疑問である。
四つめは既存市場の再活性化である。例えば、昔セイコーがやった「なぜ時計も着替えないの」というキャンペーンは今も語りぐさになっている。というのも、それまで時計は一度買ったら一生もので、そう簡単には買い換えないものという認識があった。そうなると、一人に一台しか売れないし、しかも滅多に買い換え需要が発生しない。それを打ち破って、一人で複数個持ったり、ファッションとして頻繁に買い換えるようにし向けたのがこのキャンペーンである。結果として時計市場は活性化された。

今回の任天堂によるゲーム市場再活性化、あるいは自社の再成長はこの四番目のパターンと見ることが出来る。ちなみに9月29日付日経新聞に、今年の上期末での時価総額ランキングが載っていて、任天堂はなんとトヨタ、三菱UFJ、NTTについて4位というポジションにおり、キヤノン、ドコモ、ホンダ、武田薬品などを上回っている。この株価が正当かどうかは別として恐るべし任天堂である。

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