数日前の日経新聞スポーツ欄「駆ける魂」というコラムにおもしろい解説記事があった。それは、昨年度のJリーグチャンピオンで、先日アジアのチャンピオンにもなった浦和レッズのミッドフィルダー長谷部誠選手についての記事である。
長谷部選手は中盤の選手で、レッズの要になる選手である。プレーも結構目立つ。しかし、その記事によると「同僚の田中達也のように俊足で突き進んでいくわけではない。懐の深い永井雄一郎のゆるゆるとしたドリブルとも違う。」それにもかかわらずドリブルするとするすると前に進んでしまう。そのわけを本人に聞くと、長谷部が「ああ、それは空間認知能力です」と答えたという。
始めて聞く言葉なので、大変興味を持った。長谷部によると「相手がどこどこに立っているかを瞬間的にとらえて、ではどこにどうボールを出していったら、次のスペースにうまく運べるかを見つけるんです」と言うことらしい。
これはビジネスにも全く当てはまる話だと思った。仕事が出来る人間は、「これを相手に言ったらこういうに違いない。そうしたら次はこう言おう。」、「こういう提案をしたら、こんな反応があるに違いない。そのためにこんな答えや二の矢を用意しておこう」といった具合に常に先を読んで仕事をしている。それに対して、仕事の出来ない人間はまず目の前の仕事をこなすのに手一杯で、それを終えるとほっと一息ついてしまう。そこに相手から次のタマが飛んでくるともう避けられない。
長谷部によれば、こうしたことが出来るためには、一つ一つのプレーの質を高めないといけないと言う。たとえば、「FWに縦パスを入れるとき、その背後にいるDFがどの方からボールを狙っているかを見極めて、どちらの足にパスを当ててあげるべきか」を考えるという。すごいことだ。
そうして、こうしたことがちゃんと出来たかどうか、毎回反省して自分のプレーの幅を広げていくそうだ。内田流に言えば、20の引き出しをたくさん用意していくと言うことになるのだろう。
仕事でも、空間認知力ばかり高くても一つ一つの仕事をきちんとこなせないとうまくいかないと言うことなのだろうが、ずば抜けた才能を持たない人にとっては、一つ一つの仕事の質もさることながら、こうした先を読んだ上で仕事をこなしていく能力というのもあったらありがたいに違いない。
私もこれからこの言葉を使わしてもらおうと思った。コピーライトはもちろん長谷部選手である。
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