ブログ

アマゾンの頭脳

先週の大隈塾で、私はビジネスマンの読むべき必読書を3冊紹介した。
いずれも過去にこのブログで紹介した本ばかりであるが、西堀栄三郎先生の「創造力」、ジョエル・バーカーの「パラダイムの魔力」、そして二宮清純さんの「勝者の思考法」である。

それに関して、大隈塾の塾生(学生)がおもしろいことを教えてくれた。
アマゾンにはある消費者が過去に購入した本をもとにしてお薦めの本を画面やメールで教えてくれるお節介な仕組みがある。さらにある本を検索するとそれを検索した人は他にこの本を買っていますよと他人の読書の傾向まで教えてくれる。
どちらもコンピュータが顧客の購買履歴を検証して、次に買ったらいい本を自動的に薦めてくれる仕組みだ(専門用語でいうとリコメンデーションエンジンというソフトウエアになる)。

これに関して、彼が上の本を検索してみておもしろいことが分かったというわけだ。
上記の3冊のいずれかをアマゾンで検索すると、残りの2冊の本がお薦め本として出てくるというのだ。私も実際にやってみた。例えば「創造力」を検索すると見事に「パラダイムの魔力」と「勝者の思考法」がお薦めとして出てくる。しかも創造力の本を検索した人はそれぞれの本をかなりの比率(私が見たときには22%ずつ)で購入しているという。かなりの比率だ。
パラダイムの魔力や勝者の思考法を検索しても相手方の本がお薦めとして紹介される。ただし、創造力は絶版になっていることもあってお薦めされない。
要するに講義で私の話を聞いた学生がみんなアマゾンで検索をかけた結果、従来はそんなに強い関係がなかったこの3冊がアマゾンのコンピュータの中で関連づけられてしまったというわけだ。

このブログを読んだ皆さんが同様にアマゾンを検索してみたときにこの関連づけがさらに強化されるのか、あるいはこれは変だということで解除されるのか興味津々である。私の勘(仮説)は前者だ。

それにしてもアマゾンのリコメンデーションにこんなに影響を与えてしまう私は気をつけなくては(といっても何に気をつけたらよいのか分からないが・・・)。

関連記事

  1. ユーザーシーン
  2. 優れたブランドにはストーリーがある(続き)
  3. レーザーディスクの耐久試験
  4. ガリバーのビジネスモデル
  5. 20の引き出しにはどんな見出しがついているのか
  6. 優れたブランドにはストーリーがある
  7. 空想生活
  8. 論文作成から学ぶ仕事の進め方

コメント

    • jana
    • 2009年 1月 21日

    「創造力」は絶版でしたが、改題されて文庫になってますね。
    西堀榮三郎「技士道 十五ヶ条 ものづくりを極める術」(朝日文庫)
    http://www.amazon.co.jp/dp/4022615338
    思考法第三弾も期待しています!
    いつごろ発刊の予定ですか?

  1. 「絶版の必読書」と「発売前の新製品」

    本日は大学院(修士)生活、最後の授業=リーダーシップ論
    であった。
    (?http://www.w-int.jp/education/okumajuku/index.html

     
     
    修士論文も書き終えたことだし、ホッとした気分であるはずだが、、、ランナーズハイで駆け抜けた学生生活が終わるのも、なんだか寂し…

    • 内田和成
    • 2009年 1月 26日

    janaさんへ
    ご連絡ありがとうございます。
    知らぬ間に再販になったのですね。私も早速購入してみましたが、章立てが若干変わったのと、小見出しが一部変わったくらいで全く同じ本といっても良いですね。
    これからは、もっと気楽に推薦できることになってうれしいです。

  2. リコメンデーション機能を土台と内田さんがコラボレーションして(?)良いもの同士が関連付けられるということは、とても良いことだと思いました。気をつけるどころか、ぜひとも積極的に行っていただきたいと、読書家としては思いました。

    • sato
    • 2009年 1月 26日

    一橋大学経済学部2年の佐藤と申します。
    先日の講演はコンサルタントの声を生で聴ける非常に貴重な機会でした、ありがとうございました。
    本当は質問をしたかったのですが、しそびれてしまったのでブログのコメントに書くことにしてみました。
    というのはあまりにも質問が個人的なことであるので、講演会が終わったら直接伺えないかなとタイミングをうかがっていたからです。
    10年後、30年後の自分を考えてそこから逆算して選択を行いなさい、ということをおっしゃっていましたが、僕は「日本企業というプライドをもう一度もたせたい」という野望(?)を持っています。
    その目標を果たすためにまず力をつけたいと思いコンサルタントを目指しているのですが、目標が抽象的でその具体的な経路に関しては見えていません。
    内田さんのアドバイスを聞いて、僕のビジョンは逆算の計算の途中式の計算をしないで答を導き出しているということを再確認させられました。
    将来からの逆算は段階的にキチンと行うべきなのか、それとも僕のようにジャンプアップがあってもいいのかという逆算のやり方についてのことや、僕の目標に関してなにかアドバイスを頂けたらと思い、ブログの内容とは関係ないのですが、コメントさせていただきました。
    お忙しいとは思いますが、時間のあるときにでもお応えいただければと思います。

    • 内田和成
    • 2009年 1月 27日

    Wakiさんへ
    久しぶりです。
    もちろん、今後とも自分がいいなと思った書籍や経営者はどんどん紹介していきたいと思います。
    多田、自分のブログを越えてアマゾンにまで影響が出るとは思わなかったので、ちょっとびっくりしたというのが正直なところです。

    • 内田和成
    • 2009年 1月 27日

    佐藤さんへ
    ゴールから逆算するときに、すっきりした筋道(すなわち明確で確実なキャリアパス)が見える場合とそうではない場合があると思います。
    後者の場合は、自分の目標が十分考えられていない場合と非現実的な場合があります。目標がはっきりしない場合は、それを紙に書いたり人と話すことでより具体的なプランに落とせるでしょう。
    非現実的な場合は、それでも針の穴に糸を通すようなチャレンジをするか、あるいは自分の身の丈にあった形に軌道修正することになると思います。
    私は、結構チャレンジが好きです。挫折も失敗もいっぱいありました。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

RSS 内田和成のビジネスマインド

  • BCGのコンセプト紹介の本を書きました 2016年11月3日
    今年2016年は、BCGが東京に世界で2番目のオフィスを1966年に開設してから...
  • 事業アイデアの発想法 2016年10月28日
    今日はビジネススクールの内田ゼミにBCG時代の同僚で現在事業開発のコンサルタント...
  • 学部7期生 2016年7月8日
    今日の合同ゼミには学部7期の卒業生の中澤君と薬丸さんも顔を出してくれました。明日...
  • ゼミ合宿 2016年7月8日
    今日は内田ゼミのMBA生と学部生の合同ゼミ初日です。例年土日の一泊二日でやるので...
  • 模擬授業のお知らせ 2016年7月6日
    来る7月24日(日)の午後、早稲田大学ビジネススクールでは2017年度の入試説明...
PAGE TOP
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。