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WIN-WIN-WINの時代の終わり

先日、雑誌「財界」のインタビューを受けたのですが、それが先週号に記事として載りました。
もちろん、震災発生前のインタビューなので、少し現状の空気とはずれた大所高所の話になっているかも知れませんが、最近の私の持論が載っているのご容赦下さい。

Zaikai_2

一つは、日本の国が抱える構造的な問題、すなわちかつての日本の強みであった、国と企業と個人がWIN-WIN-WINであったのが終わりを告げてしまった。したがって、これからの企業や個人は国を頼って生きてはいけないということを言っています。
かつては国が成長すると企業も成長し、結果として従業員も幸せになるという方程式でした。今は、国が成長するのがきわめて難しくなっています。その中で、今までと同じやり方では、LOOSE-LOOSE-LOOSEになってしまいます。そのため、それにいち早く気づいた企業が自らは何とか収益を上げようと躍起になっています。結果として、企業の利益は上がるのに、そこで働く社員は必ずしも幸せでないという絵柄になってしまいました。これを何とかするためには、個々人が国や企業にぶら下がっていてもダメなんだと気づくことであり、その結果個人が頑張れば、企業も成功し、もしかしたら国も良くなるかも知れないという逆の方程式を狙うしかありません。

さらに、日本の国内だけでは、成長機会がないために多くの日本企業がグローバル市場を目指しています。しかし、日本の企業が日本という国境を自ら定めたり、日本企業であることにこだわりすぎると自由度を失い、ビジネスチャンスを逃すので、東アジア全体があたかも一つの国であるがごとく振る舞って行動した方が良いというのが二点目です。東アジアの消費者のニーズはきわめて均質化しつつある。これらをうまく利用するには、日本企業だ、韓国企業だと言っていてはダメで、域内の企業として生きるべきだというのが私の持論です。東アジア企業構想と勝手に言ってます。

最後に、日本はこれまでは世界第2の経済大国であったために自国経済が大きく、結果としてあらゆる産業を持つことが出来、国としてはフルセット型の産業構造を保持できた。ところが、日本の国としての成熟化(実際は衰退が始まっている)、中国・インドの台頭などで日本の相対的な地位が下がっており、これまでのように全ての産業で競争力を持つことが難しくなっている。その結果、日本は特定の産業でしか競争力を発揮できないし、かつそこに存在する全ての企業が成功するのは難しい。今、日本が国としてなすべきことは、育てる産業を選ぶことではなく、捨てる産業を決めていくことではないかと主張している。ただし、企業をつぶすという意味ではなく、国として育成したり、保護するのをやめていくと言うことである。

詳しく知りたい方のためには、本文のPDFを添付しておくので、ご覧下さい。

「zaikaikiji.pdf」をダウンロード

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コメント

    • みの
    • 2011年 3月 31日

    "win-win-win"に対して"loose-loose-loose"というのはパッと聞き違和感があるのですが、意図しているのですか?

    • 坂倉
    • 2011年 4月 02日

    lose-lose-loseとloose-loose-looseのちがいは??

    • 内田和成
    • 2011年 4月 02日

    すみません。lose-lose-loseのスペルミスです

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