昨日と言うより、本日未明にサッカーのヨーロッパクラブ選手権の決勝戦があった。チャンピオンズリーグ決勝戦で、イングランドのマンチェスターユナイテッドとスペインのFCバルセロナとの一戦だった。とても素晴らしい試合だったと同時に、きれいでため息の出るようなバルセロナの試合展開でもあった。
3-1でバルセロナが勝ったのであるが、点差以上にバルセロナの圧勝だった。とにかくパスをつないで、ゲームを支配し、ここぞというところで相手守備陣を切り崩して、堂々とシュートする。
大会の得点王に成り、決勝戦でもMVPとなったメッシが話題となっているが、その中心選手としてゲームを作っているのはシャビであり、ワールドカップでも大活躍をした。空間認知能力の極めて高い選手である。彼がいて初めてメッシの能力が活かされると言っても過言ではない。
マンチェスターユナイテッドは決して弱いチームではない、世界最高峰とも言われるイングランドプレミアリーグの今年の優勝チームであり、チャンピオンズリーグの準決勝戦では日本の内田篤人も出場したことで話題となったドイツのシャルケを一蹴している。いわば王者の試合をするチームである。
この世界でも一二を争うクラブチームであるマンチェスターユナイテッドを相手にバルセロナはパスを回して美し勝つという自分たちのサッカーを堂々と繰り広げて圧勝した。
私がここで書きたかったことは、試合なんだからどんなにみっともなくても、勝てば良いという考えもあるが、バルセロナような美しく勝つことの難しさである。国別のサッカーの祭典であるワールドカップでも優勝常連国であるイタリアやドイツは決してきれいに勝つタイプではない。スペインもバルセロナと同じく美しいサッカーを展開する国であるが、ようやく2010年にワールドカップ南アメリカ大会で初優勝した。
他にも美しいサッカーの代表例として取り上げられるのが1974年のワールドカップオランダ代表である。残念ながら決勝戦で敗れたが、ヨハン・クライフを擁して、とても美しいサッカーを展開して、トータルフットボールという言葉と共に歴史に名を残した。そのときに優勝したのはベッケンバウアーを擁した西ドイツである。興味のある方は、ググって下さい。日本でも2006年の高校サッカー選手権を制した県立野洲高校がパスを回して相手を崩していく華麗なサッカーで、トータルフットボールと呼ばれたことがある。逆に言えば、美しく勝つと言うことはそれくらいまれなことなのである。
ちなみにサッカー以外でも時々、その世界の常識を変えてしまうプレーヤーやチームが登場することがある。テニス界のビヨン・ボルグやF1のアイルトン・セナが代表例だ。
企業競争の世界でも、泥臭く勝つ方が間違いないし、長続きする。たとえばトヨタ、インテル、リコー、GE、コマツなどがそうした企業の代表例であろう。それに対して、美しく勝とうとする企業は一つ二つのヒット商品や成功例は出す者の、なかなか勝者になれないのではないだろうか?ホンダ、ソニーなどがその代表例だ。
今のところ例外がアップルだ。元々美しく勝とうとしてマイクロソフトやインテルのウィンテル連合に完膚無きまでにやっつけられ、倒産寸前だった。それが今やマイクロソフトを上回る株価をつけるまでに成功している。果たして、この先どうなるのであろうか。
余談:本論には関係ないが、1970年代にオランダの中心選手として活躍しトータルフットボールの申し子の名前をほしいままに活躍したクライフは、その後1990年代にスペインのFCバルセロナの監督になり、自分の信念であるパス回しによる美しいサッカーを教え込んだのが今日のバルセロナの美しいサッカーにつながっていると言われている。
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内田先生、先日は嶋口・内田研究会にて久しぶりにおめにかかれて嬉しかったです。偶然ですが、ちょうど先々週に、ケーブルテレビのJSportsで「FC Barcelona Remember Boss Johan Cruijff」というBarcaTV制作のドキュメンタリーが3話連続であり、すっかり感化されて3冊もクライフ本を買って読んでいるところです。彼自身へのインタビューが中心で、「監督は状況を読んで修正する存在」などなど示唆に富んだコメントばかりでした。残念ながら再放送の計画は今の所無いようなのですが、きっと先生もお楽しみになれると思います。ちなみに番組はスペイン語で、日本語の字幕がありがたかったです。
彼の本を読んでいると基調になっているのは非常にオランダ的な思考だな・・・とも感じました。もともと自分はオランダと縁が深いのですが、この春は美術展もいくつかありますし、クライフさんとの出会いもありましたしオランダがマイブームとなりました!(笑