第3回目は、国としてのミャンマーについて触れてみたいと思います。
ミャンマーがなぜ世界最貧国になってしまったかは、軍事政権のせいではなくその前の社会主義国家になったことが一番の理由なようです。1962年のことです。その後1988年に軍事クーデターが起き、今日に至っています。
日本にいるとミャンマーは、世界の中で孤立化し突然昨年春に民主化したように思えますが、現地の方に聞くと既に今を去ること9年前の2003年に7段階に及ぶ民主化ロードマップが作成され、それに沿って、着実に前進(憲法制定、議会設置…)して、昨年2011年3月 テインセイン大統領就任に至っているとのことです。ちなみにテインセイン大統領は元軍のNo.4で 67歳、心臓に病気を抱えているそうです。またアウンサンスーチーさんもほぼ同世代で66歳だそうです。
ちなみに現地の企業関係者の間では、軍事政権の評判はあまり悪くなく、確実に経済成長が続くと見ているようです。一方でスーチーさんが政権を取ると、彼女が原則国産主義者で、外国資本の導入や輸入品を歓迎しないというスタンスを取っていることに不安を覚えているようです。要するに原理原則主義者で融通が利かないと思われています。
一方で、スーチーさんは庶民には圧倒的に人気があるようです。我々が滞在中も毎日のように長時間の停電があり、国民は不便を強いられているのに、大企業やホテルは自家発電装置があるのであまり不便なく過ごせているあたりも、現政権に対する不満の元凶かも知れません。
停電に関して面白い話を聞きました。ミャンマーでは恒常的な電力不足が続くのですが、国北部には結構な数の水力発電所があって大量の電力を生み出しているそうです。ところがこれらはほとんどが中国資本で建設され、7~8割の電気が中国へ送電されてしまうために、ヤンゴンなどの南部には回ってこないとのことです。また、ミャンマーは豊富な天然ガス資源があるのですが、発電に最適な天然ガスも既に2015年分まで中国に売却済みで、国内の発電には使えないそうです。このあたりも国民感情的には面白くない、あるいは反中国の一因にもなっているようです。
そうは言っても中国とは1500kmも国境を接しており、経済的に依存度が高いので複雑な心理状況だそうです。
ミャンマーにはまだ産業らしき産業がなく、外国資本も多くはCMPと呼ばれる委託加工ビジネス中心です。これは、例えばファッションメーカーがミャンマー資本の縫製工場に材料を提供して、縫製だけやってもらい、工賃を払うという仕組みです。こうしたCMPに関する人件費は福利厚生費などを含めても月100ドルで収まると言うことですから、中国などと比べると大変コスト競争力があります。
現地には今のところ、自動車はおろか家電製品の工場もほとんどない状態で、輸入品に頼らざるを得ません。ところが、こうした内需につながるビジネスを認めてしまう、輸出入が輸入超過になってしまうので、国としては外国への輸出ビジネスを積極的に導入しようとしているそうです。
今回の視察では、経済/企業中心なので、一般大衆の話を直接聞いていませんので、少しバイアスがかかっている可能性があります。その点はご了解下さい。
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世界の工場である中国の人件費が年々増加傾向にある為、世界の工場機能が東南アジアに移っていると聞きました。
ミャンマーにも現在その様な光景が見られましたでしょうか?(工場等の建設ラッシュのような)
日本は欧米諸国とのからみもあり、なかなか進出できないようですが
日本はもっと積極的に進出すべきでしょうか?