外資系企業が日本にやって来るときに日本の業界とは異なる常識・ルールを持ち込み、結果として日本の業界がかき回されてしまうことが多い。
今から20年近く前にアメリカ最大のおもちゃ屋であるトイザらスが日本に進出した。もちろん日本の玩具業界は大反対した。一つにはそれまでのおもちゃ屋は小規模の小売店が多く、間口は数メートルでお店の広さも数十平方メートルしかないような店ばかりだった。そこへ何千平方メートル、すなわち100倍も大きな店が来たらひとたまりもないと小売店は考えた。さらにトイザらスの特徴はおもちゃメーカーと直接取引をして、なおかつ大量仕入れをするために安い値段で仕入れることが出来、それを思い切った低価格で販売するというところにあった。これでは定価に近い価格で売っている小売店はひとたまりもない。さらに、メーカーから直接仕入れると言うことで卸屋が不要になるということで問屋が大変な危機感を抱いた。
一方でトイザらスは当時の日本の大店法では、自分たちの望む大型店が自由に出店できないことを知り、アメリカ政府に働きかけて、結果的には日本の大店法を変えさせてしまった。法律まで変えさせてしまう恐るべき黒船だったわけである。そして次々と大型店を開店させ、あっと言う間に日本一のおもちゃ屋になってしまった。
最近の例をあげれば、外資系企業それも本来のゴルフ場経営会社ではなくインベストメントバンクやファンドによる日本のゴルフ場経営がある。これまで日本のゴルフ場経営は会員制度をベースにした預託金と入会金・名義書換料などプレーフィーと直接関係ないところの収入や資金の運用をベースに行っており、プレーフィーなどの収入は副次的な位置づけであった。そのために会員権相場が低迷するとたちまち経営危機に陥るところが続出した。そこへ目をつけたのが外資系企業やファンドである。彼らは、ゴルフ場に来場するプレーヤーからの収入で成り立つビジネスモデルを作り上げ、経営不振のゴルフ場をただ同然の値段で次々と買収し、スケールメリットを効かしたチェーンオペレーション型のゴルフ場経営を目指している。毎年の収入と支出だけで成り立たせるきわめて当たり前のビジネスモデルに変えただけだと言えなくもないが・・・。
同じような話は不動産業界にもあり、値上がりを期待するビジネスモデルでこれまでやってきて、バブル崩壊で大打撃を受けた日本の不動産業に対して、実際に不動産から上がる収益すなわち賃貸料などをベースにした運用利回り型の外資系という構図になっていた。後者の方は、不動産価格が安い時が買い時なのに対し、日本の不動産業は安いときは将来の収益が読めないために買いに出られず、買い時を逃したと言われている。
外資系企業もまた、異なるルールでの競争を仕掛けている異業種格闘技のプレーヤーである。
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記事を読んでいて、カード業界も似ているなあと気づかされました。
旅行業界からの参入者Amex、流通業のセゾン、銀行のJCBや三井住友。異業種格闘が繰り広げられているかな。
本来黒船であるAmexは、旅行業という本業を活かし、プレミアムカードでシェアを奪ったけれども、大きな影響力をあたえたのは年会費無料でカード業界を振り回したセゾンかも。日本勢ががんばっている業界かもしれませんね。
Hiroさんへ
コメントありがとうございます。カード業界も異業種格闘技の真っ最中ですね。
たしかに、ダイナースクラブ、アメックス、VISA、マスターカードなど外資系が市場を席巻している中で唯一国産カード会社のJCBが頑張っている。あるいはセゾンカード(イッシュアーと呼びます)はVISAやアメックスのブランドのついたカードを発行しているけれど、独立系として非常に特徴のある事業展開をしている点が特筆すべきかも知れません。
ここに携帯電話会社がクレジット事業を積極的に展開しているわけですから、異業種格闘技そのものだと思います。
というわけでクレジットカード業界については改めて書いてみたいと思っています。
ありがとうございました。