私が非常勤で監査役をやっている会社サントリーのリーダーが佐治信忠さんである。
彼は非常に豪快で、本人が明るいだけでなく、周りを明るくする資質を持っている。結果として、サントリーという会社は活気にあふれて、みんなが前向きな会社である。ややポジティブシンキング過ぎるところが気になると言えば、気になるが・・・。
佐治さんの素晴らしいところは、一見豪放磊落で物事をあまり考えていないように見えるが、実は物事を深く考えていることにある。また、一本筋が通っていて、経営の軸がぶれていない。
ずいぶん前に「経営者は自分が分からない事業は経営すべきでない」と申し上げたことがあるが、すぐ分かってくれた数少ない経営者である。
経営者の中には、自分は○○部門出身なので、研究開発のことはよく分からないとか、為替がこんな風になることは予測できなかったとか、言い訳する人が結構多い。たとえば半導体の好不況で大きく会社の業績がぶれたときに、ここまで半導体の価格が下落するとは思わなかったとか、技術の世代交代が進むと思わなかったとか、環境のせいにする経営者がいたがそれは経営者失格だと思う。経営者である以上、自分の会社の業績にはすべて責任を持つべきである。といっても、マスコミが言う責任を取ること=辞職というのも全く見当違いの批判でそんなことを言っているからいつまでも日本の経営者は思いきったことが出来ないのである。すいません、佐治さんの話から少し脱線してしまいました。
ところで、今週発売の日経ビジネスはサントリー特集です。その中の編集長インタビューにも佐治社長の特徴がよく現れてる。
たとえば、サントリーが非上場なことについて、編集長が株式市場の声を聞き、株主の声に耳を傾けるのがよい経営という考えもあるが、という質問をしている。
そこでの佐治さんの答えがふるっている。『市場の声を聞けばうまくいくというのなら、誰にでも出来る。(省略)・・・経営者にとって一番大事なのは勘ですよ、勘。この勘が働くかどうか。』
やっぱり勘って大事なんですね。【経営は勘(2月17日、28日)の項を参照】
また、コンプライアンスについても、こう答えている。
『人間がやるんだから、間違いは起こり得る。起こったときにいかに早く正しく対処できるかが大事だと言っているんですよ。』
私も全く同感である。コンプライアンス室を作ったり、ルールやマニュアルを整備することがコンプライアンス対策だと思っている企業が多い。しかし、私は人間である以上必ず間違いは起こる、それをゼロにすることは不可能であり、問題はそれが起きたとき企業としてどう対処するかという判断を社員一人一人が出来る仕組みを作ることが本質だと思っている。
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確かにコンプライアンスに関してはどの企業も過剰なくらい反応しています。でもコンプライアンスを強化しながら、業務のスピードを上げることが出来れば競争に勝てるのでは?コンプライアンス部はコンプライアンスしか考えていないけれど、業務のスピードを上げることを同時に考えることが出来たら、「改善」につながると思います。どの企業もコンプライアンスにはエース級を投入しているのだから...。
コンプライアンスで私が一番心配しているのは、本来顧客を志向すべき企業のエネルギーやベクトルがすべて内向きになってしまうことです。
したがって、もしコンプライアンスの実践が、おっしゃるような外向き、すなわち顧客対応のスピードを上げることになれば、それはすばらしいことですね。
決して簡単なことではないと思いますが、だからこそ成し遂げれば競争優位につながるというのはその通りだと思います。