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20の引き出しの使い方

今日は20の引き出しの使い方の話である。20の引き出しはいつ、何のために使うのだろう?
一つにはコンサルタントとしてお客さんと話をしているときに、相手を印象づけたり、あるいは関連するテーマに関する自分の考えを述べるために使う。
もう一つは、こうしたネタを大勢でディスカッションする際に、相手の質問に答える時や自分たちのの理論を裏付けるために、頭の中から引っ張り出してきて使う。
要するに1対1のディスカッションか、あるいはミーティングの最中に使うことが多い。
こうした話は相手の注意を引きつけるときにも有効であるが、自分の言いたいことを補強するときに、実際の事例を紹介するのはきわめてパワフルな説得材料となる。アナロジー(類似事例)の活用である。
もちろん私の場合は、講演のネタや書籍の材料としても使っている。一粒で何度もおいしいのである(このひねりはグリコを知らない、若い人には通じないかも)。

たとえば前々回に紹介した「電子マネー」の引き出しに入っている「券売機より精算機」というネタは、JR東日本から聞いた話である。Suica(乗車券や定期券として使用できる電子マネー)を導入した当初はお客さんが、残額が少なくなってくると、駅の改札口の前に置いてある券売機で事前にチャージするだろうと考えたそうだ。ところが実際にSuicaが導入されてから分かったことは、お客さんはたとえ残高が少なくなっていても乗る駅ではチャージせずに、降りる駅で精算機のところでチャージするケースが圧倒的に多いことが分かったそうである。これも考えてみれば、乗車する区間の運賃がいくらかを知らずに乗れるのがこの手の電子乗車券のメリットだとすれば、まずは乗ってしまうと言うのは自然な行為である。次に足りないかどうかに気にせず降りた駅の改札口を通ろうとして「ブー」っとならしてしまう人と、ぼちぼち足りないかもしれないから改札口を通る前にチャージしておこうという人に別れる。いずれの場合も改札口の外にある券売機ではなく、改札口より中にある精算機を使うことになる。ということで、急遽駅構内のSuicaをチャージできる精算機を増やすことにしたそうである。最近JRの駅から券売機が減っていることに気がついた人はいるだろうか?

これなどは、電子マネーのような新しいことをやろうとした場合、最初から完璧にすべてを準備しておくことは難しいので、まず実行してみて、それから軌道修正していくという考えがビジネスにおいては大事であるといった使い方をする。一言で言えば、物事はやってみないと分からないことがある。まずやってみて、そこから学ぶ姿勢が大事ということになる。これをそのままの文章で言っても迫力もなければ、説得力にも欠けるので逸話を使うのである。

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