下品な表現で恐縮だが、最近のコンプライアンス強化の動きを見ていると気になることばかりだ。企業は市場や顧客に向いた行動を取るべきなのに、いつの間にか、コンプライアンス室の設置や内部統制のマニュアルを整備するといった内部プロセス重視の流れになっている。その結果、企業のベクトルが内部を向いてしまい、本来顧客や市場に向けられるべきエネルギーが内部で消費されてしまっている気がする。今週の日経ビジネスにも行き過ぎたCSRを疑問視する特集記事が載っていた。
もちろんコンプライアンスが大事でないと言っているわけではないが、組織やプロセスに重きを置きすぎている企業が多いのに対して、それでは解決になりならないというのが私の考えである。組織を作ったり、役付役員をコンプライアンス担当に任命したり、予算をたくさんつけている企業に限って、それを持ってコンプライアンス対策のやれることはやったと思っている経営者が多いような気がする。しかし、私に言わせればトップ自らが自分で人に恥じない行動を取れなければいくらルールを定めたり、監視の目を強めたとしても、企業の不祥事はなくならない。大事なのはトップのマインドシェアであり、トップ自らがその問題にどれだけ関心を持っているかを示す方が、よほど簡単で効果のある方法だと思う。社員はリーダーの背中を見ている。ルールを決めるより、社員一人一人が自分が経営者だったら、あるいは一市民だったらこの問題へはこう対処すると考え、行動する組織が本当の意味でコンプライアンスに優れた企業といえるのではないだろうか。
この件については、少し前に国際経営者協会という組織のニューズレターに書いた文を基にしています。この国際経営者協会について詳しく知りたい方は、下記のURLにどうぞ。
http://www.ima.gr.jp/index.php
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コンプライアンスについては、まったく仰る通りだと思います。最近の流れをみていると、”集団ヒステリー”のように(下品な表現であったら済みません)どの企業も『コンプライアンスが・・』と言い募っています。この一言が、リスクを張ってでも新しいことに挑戦しようとする企業の息吹を消し去っているように感じます。
全く同感です。文章にあった、
「トップ自らが自分で人に恥じない行動を取れなければいくらルールを定めたり、監視の目を強めたとしても、企業の不祥事はなくならない。大事なのはトップのマインドシェアであり、トップ自らがその問題にどれだけ関心を持っているかを示す方が、よほど簡単で効果のある…」トップが変われば会社は変わると思います。
また、おじゃま致します。
義堂さん、平河内さん
コメントありがとう。
コンプライアンスだけでなく、最近世の中全体が清廉潔白を求めすぎるような気がします。
小さいときから、校則を一度も破ったことがなく、またお巡りさんに一度もやっかいになったことがない人間が、企業や政治の改革なんて出来るわけがないと思っています。
織田信長とまで行かなくても、型破りなリーダーがルールを破ることで世の中が変わるのだと思ってますから・・・。
でも、こんな事言っているから、エスタブリッシュメントに人気がないのだろうな私は。