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人間における勝負の研究

コンサルタントを目指す人へ贈る本の第4弾は、将棋棋士の米長邦雄さんの「人間における勝負の研究」である。

1982年に新書として発売された多少古い本であるが、現代においても通用する生き方・考え方、あるいは人生観が書かれた本である。
何がいいっていって、プロフェッショナルかくあるべしと言う言葉が随所にちりばめられていて、とても参考になる。
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私の手元にあるのはオリジナルの新書の方であるが、文庫本も出ているので、なんとか手に入るのではないかと思う。

たとえばこんな一文がある。
強い者は威張らないものです。威張る必要がないから威張らない。実力がなくなってしまうと、大きく見せたがる。(新書版ではp79)
うーん、気をつけなくては・・・。

「中学校を卒業するとすぐに、私はプロの初段になりました。どの世界でもそうでしょうが、プロの将棋の世界でも、段位以上の実力がないと出世できません。初段の者が初段の実力ですが、勝率は5割くらいになりますからパッとしません。初段で優秀な成績を残す者は、既に3、4段くらいの実力がある者なのです。それが初段を相手に指すから、連勝して2段に上ることが出来るのです。
いわば初段の肩書きで、3、4段の手をさせなければダメなのです。初段の肩書きで初段の実力では、後から来る人にどんどん追い抜かれていき、それっきりで終わってしまいます。」(同p36)
コンサルタントにも、「自分は実力があるのに、どうしてこのポジションのままなのだ。あの人は自分より仕事が出来ないのに、何であんなに給料をもらっているのだ」と文句を言う人がたまにいます。そういう人に限って、上のポジションに上がったときにそこで終わってしまいます。本当に上を目指す人や仕事が出来る人は、自分の実力の絶対値を上げることにエネルギーを使っていて、他人との比較などにうつつを抜かしていません。

米長氏は人間にとって一番大事なものはカンだと説く。そして、仮説思考を書いた私に対してのエールではないかというような一文を残している。(同p92)
「カンというのは、一つの仮説でしょう。あるいは仮説というのは、カンを基にして生まれるものでしょう。だから、仮説を立てられないようでは、仕事にしろ、何にしろ、新しいことは出来ないと考えていい。何か新しいものの創造が、偶然の幸運によって成されていると思ったら、これはとんでもない間違いです。」

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コメント

    • 内田ゼミ生(城出)
    • 2007年 7月 25日

    ご紹介の米長邦雄さんの「人間における勝負の研究」ですが、現在『祥伝社黄金文庫』より発行されています。
    「いったいどうすれば運をつかまえられるのかを一言で言ってしまうと、自分の利害にはたいした影響のない勝負で、必死に頑張ることです。たいていの人は、同じ勝負でも、名人戦とか優勝決定戦とか、昇段昇級を決める一番とかをひじょうに重視するようです。それは、たしかに大切に違いありません。しかし、私の考えは少し違います。私は、それよりも、もっと必死になるべき勝負があると思います。(中断)具体的に言えば、自分がその相手に負けても、自分の段位がすぐに上下するわけではないが、相手にとっては、勝負が直接影響して、その人の運命を左右しかねない一番です。普通なら義理とか人情とか、ふだんの仲とかに影響されます。しかし、私の人生観、勝負観では、それが一番いけない。そういう一番にマアマアで負けると、負けグセがついてしまい、運も逃げてしまうのです。そういった一番には絶対に勝たなければいけない、と自分に言い聞かせて私は勝負に臨むのです。」との記載もあります。
    内田先生のブログを拝見し、昨日本屋で入手して半分程読み進めましたが、以外な切り口の連続であり、確かにプロとは何かを考えさせられる本です。

    • 名無し
    • 2007年 7月 26日

    私も↑の方と同じく書店に買いに走ったクチです。読みながらアンダーライン引きまくりで、「こんな素晴らしい本があったんだ」とご紹介いただいた内田先生に感謝です。
    将棋の世界では師匠の「一局教えてやろう」は、見込みがないから破門するということなのです。そんなわけで師匠が教えてくれないのだから、自分でやるしかない。(p.44)
    翻って我が身を振り返ってみると、WBSの前期授業で「戦略とリーダーシップ」を受講していたのですが、、、、かなり、受け身だったなぁ・・・と自省しきりであります。
    この本を読みながら、「自分でやるしかない」と覚悟を決めて、後期こそ自発的に参加せんといかんなぁ~と考えさせられた次第です。
    引き続き「コンサル・・20冊」の紹介を楽しみにしています。

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