リクルートを創業した江副浩正氏の書いた「リクルートのDNA」という本の中にいくつかおもしろいフレーズがあったので、紹介しよう。
セコムの飯田亮さんを例に出して、成功するには『天の時』が大事と説いている。江副さんは、ベンチャーで成功するには、時代を一歩先取りする、すなわちその事業を始める『天の時』が大事と言っているが、私はそれはタイミングであると思っている。ビジネスで、早くてもいけないし、遅すぎてはもっとダメと言うことは数多くある。その中で、『今だ』と感じることができるか、さらにはその時点で不確定要素がありながら、『ゴーサイン』を出せるかどうかが、経営者の先見性であり、決断力だと思っている。もちろん、江副さん自身も天の時を間違えなかったためにリクルートという会社をこれだけ大きな会社にできたのだと思う。
江副さんの経営理念(モットー)の一つにこんなのがあった。
分からないことはお客様に聞く主義。・・・略・・・、そこで大切なことは、自分の意見を持ってお客様の意見を聞く姿勢である。自分の意見を持たなければ、お客様の本当の声を聞き取ることはできない。賛成である。最近は、まず人の話を聞いてから自分の意見をまとめるきらいが強い気がするが、自分でまず意見(仮説)を持ってから、人の話を聞いて、自分の意見を検証したり、修正することが大事だと思う。
リクルートがやっていた経営戦略を決める泊まりがけの取締役会「じっくりT会議」を有名なホテルや旅館でやったことを紹介しているところで、「『居は気を変える』という。分不相応に立派な宿を選んだのは、非日常的な贅沢な空間に身を置くことで豊かな発想が生まれる、と考えたからである。」とある。BCGでも企業の役員や幹部を対象に役員合宿という1泊2日程度のディスカッションを、東京から離れた場所でやることがよくある。これも江副さんの発想と全く同じで、毎日の仕事や意思決定から離れたところで、全社的な視点や長期的視点で物事を考え、議論するためである。
リクルートのDNAという本自体は、江副さんのメッセージが必ずしもクリアでなく、やや物足りなさを感じたが、経営のヒントにはあふれている。
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なるほど、参考にします。
場所を変えての幹部会議ですね。 いいかも。
「自分でまず意見(仮説)を持ってから、」
仮説思考!! 実践しています(まだまだ未熟です)
花田さんへ
久しぶりですね。
外資系企業でよく行われるオフサイトと称するミーティングも趣旨は、日頃のビジネスを離れて事業や会社の将来を考えるという趣旨のようです。
『天の時』っていう言葉に関して、中国のある諺を思い出しました。
「天の時、地の利、人の和」という諺です。
出所は「孟子」だそうで、原文は「天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず」というのです。
これは元々皇帝に言ったそうですが、今の企業環境では、企業の創業者にとっては起業のパートナー及び社員の力を合わせて、みんな同じ方向に向けて頑張っていく意味をするのではないかと思います。
起業が成功になれるかどうか、起業者自身はもちろん、起業者の身の回りの人間の力を借りれるかどうかによることではないかと思います。
「天の時」、そして、「地の利」は客観的な条件だと思えば、「人の和」は主観的な条件だと思ってもいいでしょう。起業者には主観的な条件が備わらなければ、いくら客観的な条件が備わっても、なかなか成功できないでしょう。
企業のオペレーションには同じことが言えるでしょう。
貴ブログの本旨にはずいぶん外れたコメントですが、ご容赦下さい。
崔さんへ
コメントありがとうございます。天の時の出典は同じだと思います。日本でも「天の時、地の利、人の和」の三拍子がそろわないと戦いに勝てない、すなわち企業としても成功しないと言われています。
私は、崔さんとは逆に人の和はリーダーシップでなんとか作れるし、地の利も戦略的に作り出すことは可能であるけれど、天の時だけはタイミングの問題で、いくら実力とリーダーシップのある将軍でも天下を取れなかったように、いかんともしがたいところがあるのではと思っています。