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小さな池の大きな魚

HOYAという会社が以前掲げていた戦略をご存じだろうか?それは前社長・会長を務めた鈴木哲夫氏が提唱した「大きな池の小さな魚になるより、小さな池の大きな魚になれ」というものである。ここでいう大きな池とは、市場の大きさのことを言い、小さな魚とはその中でHOYAの占める売上の大きさのことを言う。要するに市場規模の大きなところに出て行って、売上を稼ぐより、小さな池、すなわち市場規模の小さなところで圧倒的なシェアを稼げという考え方である。
その理由は、当時のHOYAは売上も小さく、大きな市場に出て行っても大企業を相手に戦うだけの体力もなく、またいざ競争になったらひとたまりもなくやられてしまうと考えたためである。
一方で、市場規模が数百億円の市場であれば、大企業から見て全く魅力のない市場で、大企業が参入してくる恐れはない。そこで200-300億円の売上を稼ぐ方が、競争相手も強くないし、自社が成功する可能性が高いと考えたのである。
なぜ大企業が進出してこないかと言えば、売上が数千億円から数兆円の大企業にとって、新規事業といえども売上は最低でも数百億円、場合によっては1千億円程度を期待されている。そのため市場規模が5百億円の市場に参入して30%のマーケットシェアをとっても150億円しか売上が立たないところには、大企業は絶対出てこないからというものである。
こうしたやり方をとることで、HOYAはオリジナルのクリスタル製品から、半導体のフォトマスク、めがねのレンズなどで強みを発揮していった。

どうしてこんなことを思い出したかと言えば、本日の日経新聞にスズキ自動車が業績好調で、主にインドやパキスタンなどの西アジアで成功していると出ていたためである。スズキといえば日本で長らく軽自動車のトップメーカーとして君臨していたのだが、その市場をトヨタ自動車系のダイハツが荒らしにかかっている。そのため、スズキは日本市場でダイハツと利益なきシェア争いをするより、大企業がまだまだ地歩を固めていないインド市場(そこではスズキが50%のマーケットシェアを持っている)に力を入れているのだろうなと感じたからである。

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コメント

    • 溝本義史
    • 2007年 11月 02日

    今は「小さな池」ですが、インドが「大きな池」になるとすると、HOYAの場合とは違うのでは?
    池が大きくなるスピードに上手く追従しなければ、新規参入を許す事になるのでしょうか?
    ただ、インドで大きくなるのが『軽自動車より上の池』だとすれば、やはり、スズキは良い池を押さえたと言う事でしょうか?
    以上

    • 内田和成
    • 2007年 11月 02日

    溝本さんへ
    確かにインドは現在はともかく、将来は大きな池になることは間違いないので、HOYAの戦略の例としては不適切でしたね。
    ご指摘ありがとうございます。

    • 溝本義史
    • 2007年 12月 18日

    以前、「インドで50%のシェアを得てるスズキは安泰か?」に関し、異議を唱えました。
    昨日、インドに2年いた人と会話した所、
     「スズキは安泰かもしれない」
    と考えたため、追加コメントします。
    スズキが安泰かもしれないと考える理由は、インドが『極度に”階級”がハッキリとしており、階級は固定的』と言う制約があるためです。
    インドで、どの階級の人達が自動車購入しているかは不明ですが、多少サラリーが増えようと、階級の壁を越えられる訳ではないため、、結果、「軽自動車マーケット」を支える人は固定的化する可能性があると考えます。勿論、階級の中で多少のセグメント化されるとは思いますが、、、
    また、「階級社会」が崩壊する可能性は低いと考えます。理由はあまりに長い歴史、宗教面で肯定されて来たシステムであるためです。
    裏が取れてませんが、どう思われますか?

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