今月の私の履歴書はノーベル化学賞を受賞した野依良治さんだが、今日8日の回に、彼がノーベル賞を取るきっかけとなった実験の話が出ていた。専門的なことは分からないが、無生物物質には左右対称の分子構造を持つ物質が50:50で存在するのが常識だったのを、非対称で製造する方法を考えたらしい。それを実験で証明したときの話が書いてあった。
但し、私が言いたいことはそうした難しい話ではなく、その過程で彼が言っていることに興味を持ったからである。野依氏によれば「発見は計画できない」という、しかしそれを見つけることあるいはその意味することを考えるのが大事だと言うことを主張していた。実験などで起きることを見つけるのを「事実の発見」とよび後者の意味合いを考えるのを「価値の発見」と言っている。
コンサルティングの仕事でもビジネスでも、何か現象が起きたときに同じ物を見ながらなぜこんなに見方が違うのかなと思うことが多い。その理由は大きく2つある。一つは物差しが違うので見ているものが違うという話である。同じ女性を見ても、姿形に目がいく人もいれば、服装に目がいく人もいる。あるいは顔の表情をとらえる人がいる。この違いが一つである。
もう一つの違いは、見たものから何を感じるかあるいは読み取るかであって、こちらは観察力以上に想像力(推理する力)が大事な世界である。上の例で言えば、その女性は何をしようとしているのか、それによって自分にどんな影響があるのか?あるいは何をしてあげることが出来るのかといった影響力やアクションにつながるところまで考えが及ぶかどうかである。
要するに物を見る「物差し」と読み取った結果の「解釈」の2点が大事な要素となる。
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内田先生
ご無沙汰です。日ごろ関心を持っているトピックなので議論に参加させてください。
二つの要素の見方、分かりやすいですね。一つ目の物差しは考察標的のサンプル抽出の話だと思いますので、議論の余地はありません。
二つ目の解釈は非常に深・いい話だと考えます。ちょうど最近の読書から、同じものを見て違う結論に繋がる命題は西洋的にCognitive Psychologyの分野(the study of systems that relate output to input)で知識や経験からの演繹だと言い、いくつかのCognitive Modelもあることを知りました。人に図などを見せ、図の中の人の会話を書かせることなどで、その人のロジック・価値観(推理する力よりも推移する方向。強弱も働くと思うが、そもそもどこに考えが行っているかを重視する)を明らかにする、リーダーの人選の抽出や育成に使うテクニックもあります。一方こちらのMBA(Massachusetts Buddhist Associatio)で受講をして、仏教的にこのテーマを「心魔」で説明していることが分かりました。「心の魔」が「目の障」となり、自分のみたいものしか見えないと言うようです。その「心魔」は前世から来るものだと解釈する、宿命的な話になってしまうんですが、リーダーシップで言うと、生まれつきのものかどうか、後天的な努力でどこまで行けるかの話に繋がるかと思います。二つのcontextを並べて一緒に見ると面白いですね。
どちらも私が入門級しかないので、後日理解が少し深まったときにまたお話できることを楽しみにしています。
内田先生
わたしも日ごろ関心をもっているおはなしなので、参加しにやってきました。価値と価値観について関心を示しています。
このおはなしとリンリンさんのおはなしにインスパイアされて、リーダーについて不思議に思っていたことを思い出しました。
小さい頃からリーダーになりたいって思っているひとと思っていないひとがいる。リーダーになりたいって思っていたリーダーとそうでないリーダーがいる。リーダーになることを快楽に思うひととそうでないひとがいる。リーダーになることを責任と思うひととそうでないひとがいる。
これらのことは何を物語っているのだろうと思ったんです。「心魔」の仕業なのでしょうか??
ところで、ヒト以外の動物の場合どうなのか、というのも興味深いところです。
今、私は関心をもっていることの1つに、ZERO-SUMとVALUE CREATIONとの違いってどうして生じるんだろうということがあるため、より興味深く思いました。私も学びを深めてまたおはなしできることを楽しみにしています。
なんにせよ、ダンディー教育は国際人教育なのねと素敵に思いました☆
リンリンへ
久しぶりだね。素晴らしいコメントありがとう。勉強を続けているようで、何よりです。
心魔と言う話興味深いですね。今度会うことがあったら、詳しく教えてください。
私が読んだ本にジョエル・バーカーの「パラダイムの魔力」があります。原題は「Paradigms」ですが、この中に出てくる人間は現実を見るのではなく、自分が見たいものを見るのだという文章がとても印象に残っており、リンリンの話に近いものを感じます。
ところで、明日から上海に行ってくるよ。
ちょうさんへ
コメントありがとうございます。リーダーになりたい人となりたくない人、最近は出世したくない人が多いらしいですね。あるいはリーダーを楽しめる人と、苦労ばっかりしてと思って楽しめない人、確かにいますね。
私自身のことを語れば、リーダーになりたかったわけではないが、はからずもリーダーになってしまった。しかし、なってからはリーダーは楽しくやらしてもらいました。根が楽天家なせいだと思いますが、勉強にもなりました。
ゼロサムとバリュークリエーションの話はコメントだけではよくわからないところがあるので、機会があれば教えてください。
内田先生
最近はちょっと「勉強」の定義について分からなくなってきました。ビジネススクールで受講をして勉強した、コンサルで仕事をして勉強した、いろんな人と話をして勉強した、いろんな国を見て勉強した。勉強とはなんだろうね、みたいな。と思いながら、北米を2ヶ月歩き回る旅に出ました。これも勉強でしょうか。。
全然別の話ですが、i-phoneを使ってどうでしょうか。私も買おうかと思っていますが、周りがi-phoneを買ってもいいけど、もう一台携帯電話を買う覚悟を持っていればね、と言われました。ちなみに、上海ではゼミモノi-phoneを売っています。mobile部品の製造工場の集積地が部品を集めて自分でいろんなメーカーのコピーを出しているようで、i-phoneも、売価は3万円前後だと思います。崔さんとかに聞いて見てみると面白いかもしれませんよ。
one year stayして来年春に上海に戻ってコンサルを続けることにしました。活きて帰ればね。
Missing P.Uchida here in Toronto.^^
リンリンへ
ゼミ生と一緒に上海にきています。
今豫園です。ゼミ生が見学中に私はスタバでこれを書いています
もちろんiphoneです。
どこでもwebが見られるのはいいのですが入力が面倒です。
携帯電話としては今ひとつですが、PDAor超小型のPCとしてはとても良いと思います。
内田先生
遅ればせながら『スパークする思考』の発売、おめでとうございます!
このエントリー以来「心魔」という言葉が気になっていたので、今日はこちらにコメントさせていただきます。
実体経済と金融資産の間に妖怪がいるというおはなしを読んで、金融危機という事実からどういう価値を発見できるかということに問題意識を感じていました。
さらに、BCGのWebサイトで「チェンジモンスター」についてのおはなしを拝見し、理解が深まりました。コンサルタントの方は、本来、自分がモンスターにならないよう自省するはずですよね。もしそうであるならば、頼りになる人だなと私に限らずみんなにもそう思われるだろうと思うんです。
こうした教育はとてもすばらしい取り組みだと感じます。ありがとうございます。
今、私はReflectionという言葉に注目しています。内観、内省、反省ということを考えます。マーケティングの世界では「消費者」は「生活者」に変わる合言葉なのかしらと見ています。そう考えると「消費刺激策」にも直近より先の世界がみえてくる気がします。
これからは「クリエーション」について考えたいなと思い願います。そんなこんなで『スパークする思考』を再読したいなと思っているジャスト・イン・ナウです☆
P.S
リンリンさんにも感謝しています☆
ちょうさんへ
こういう時代だからこそ、一度自分を振り返るという意味でreflectionが大事ですよね。
心魔という言葉は私は初耳でよくわかりませんが、心の中にバリアを張っている状態なのかなと思います。
ジョエル・バーカーの言葉を借りればパラダイムの魔術をかけられて、起きていることが見えなくて、見たいもの見えている状態なのかなと思います。
すぐにスパークしなくても、問題意識さえ持っていれば、いつかスパークすると思います。気長に待ってください。