ちょうど読み終わったばかりであるが、PHP新書の「『品質力』の磨き方」は良い本だった。
リコーで長らく、技術者として製品開発や技術開発に従事されてきた長谷部光雄さんという方が書いた品質管理に関する本である。しかし、これまでの品質管理とは大きく異なる、これから起こるかも知れない問題を未然にどう防ぐのかという視点で書かれたユニークな本である。
いつもの如く、いくつのお気に入りを紹介しよう。
「品質最重点という言葉には矛盾がある。品質を最重点に考えると言うことは、無限にコストをかけることになり、非常に高価な製品を作ることである」と、安易に品質重視に走ることを否定している。コストを意識しながら、あるいは今までの大きさや重さを維持しながらどうやって品質を向上させることを考えるところに技術の進歩があると説く。
何でも規制や検査という形で安易に防止策に走り、結果として企業だけでなく消費者に余計な負担を強いている金融庁や厚生労働省に聞かせてやりたい言葉だ。
カラシニコフの設計思想
カラシニコフという自動小銃があって、世界中で使われている。ロシア製である。ロシア製で安いために世界中で使われているのかと思ったら、そうではない。非常にシンプルで余裕を持った設計になっているために、誰にでも作れるという利点があり、かつどんな悪条件で使用されても故障することが少ないという特徴を持つ。そのために人気があるのだという話は新鮮な驚きだった。
「必要な情報とは、次の行動を決定するための情報なので、すべての行動が終わった後では意味がない。」
これは、私の「仮説思考」で言っている話と同じだ。
中でも一番気に入った言葉は、
「適切な目標を設定できたときの技術の可能性というものは、無限であると感じさせる話である。」
この文章で、技術を人間と置き換えても、通用する素晴らしい話だ。実際、どんな話だったかは本書を是非お読みください。
この記事へのトラックバックはありません。
zuKaoでございます。以前から気になっており、やっと読み終えました。
「品質最重点という言葉の矛盾」や「カラシニコフの設計思想」は非常に理解しやすかったです。理解できるのと実行できるかは別ものですが。
私は「考えない技術者」や「技術者本来の活動時間」という部分も考えさせられました。ここも、内田先生のよく言われる「仕事と作業の違い」に通じる考えだと感じました。
追伸:
先日の嶋口研究会の内容もblogにUPさせていただきました。
zuKaoさんへ
嶋口研究会について、ご自身のブログへのアップありがとうございます。
やっと会えましたね。これからもよろしく。