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危機のリーダーシップ(続き)

先日書いた危機のリーダーシップとは別の視点での興味深い記事がありました。3月23日付の朝日新聞社会面の記事です。

今回の大震災でも非常に大きな被害にあった岩手県釜石市では死者・行方不明者が1000名を超えたそうですが、当時学校にいた3000名の小中学生は一人の犠牲者も出さなかったそうです。

たとえば校庭でクラブ活動していた中学生には、誰からともなく「まず逃げろ」という声が上がったという。あるいはある小学校の児童たちはいったんは校舎の3階に逃げたが校庭に中学生が集合しているのを見て、また校庭に集合し、中学生と一緒に1キロも離れた高台の介護施設に逃げたという。ところが、そこにも波が迫っているのに気がつくと、先生の指示を待たずにさらに上を目指して全員助かったという。いくつかのコメント「低学年の子や近くにいたおばあさんとかの手を引きながら、とにかく走りました」、「とにかく高いところへ、ってずっと教わってきたから」

なぜそういう行動を取れたかと言えば、2004年より小中学生に津波の怖さを教えてきたという。それを指導してきた群馬大学教授の片田教授が子供たちに教えた3つのことというのが興味深い。①揺れたら家に向かわず、とにかく逃げろ②ハザードマップを信じず、状況を見て判断すること③そして、人を助けること。

私が興味深いのは、誰か強力なリーダーたとえば校長や教頭の指示だけで今回の避難がなされたわけではないというところにある。新聞記事なので、子供たちの自主性のみが強調されすぎているきらいはあるが、こうした危機の時に子供たちの自主的な行動がそこかしこで行われたという点に素晴らしさがある。

危機においては、上司の指示を待っていたりしたら、打ち手が間に合わない。あるいは自分の身に危害が及ぶ。もちろん、マニュアルを開いて読んでいるようでは手遅れである。

それより、原理原則を知りつつも、最後は自分で見たことをベースにマニュアルに頼らず自主的に判断して行動するというのが危機において自分を守るのに大切なことです。その際、原理原則を知るというのは大事で、それがなければ人間にはある種の帰巣本能が働くと思いますので、釜石の子供たちはみんな自宅を目指して帰ってしまったのではないかと思います。あるいは、高台を目指さす丈夫そうな建物目指してしまったかもしれません。

釜石市の子供たちに比べて、今回の地震に驚いて自分のビルから飛び出してしまった人や、あるいは歩いて家へ帰った人は、だいぶ危機における判断能力が弱いのではないかと心配してしまいます。当然ながら、地震の時には耐震構造のビルの中にいた方が安全に決まっています。

ということで、今日言いたかったことは、危機においては通常の組織における指揮命令系統は何の役にも立たないという前提で、自分の目で現状判断をし、自分の判断で行動するというのが何より大事であるということです。

釜石の小学生からは
1)原理原則の徹底
2)マニュアルを信じ込まずに、状況を見て自分で判断することの重要性
3)指示待ち族ではなく、自分で判断できるメンバーを育てることの大切さ
を学んだ気がします。

子供でも出来るのですから、我々大人が出来ないわけはないと信じています。

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コメント

    • y
    • 2011年 3月 28日

    昨日までの一週間、被災地の復興支援のため、南三陸・気仙沼南部・女川に行っておりました。
    (本職はビジネスマンです)
    現地の状況は大変ひどく、私の知る限り、阪神淡路や中越沖と比較しても、最もひどいです。
    現地の方から、
    「海に近い所に住んでいた人は、すぐに逃げたから助かった。海から20~30m以上離れた所に住んでいた人は、『まさかここまで来ないだろう』と思っていたから、津波に飲みこまれた」
    という話しをうかがいました。
    もともと津波の経験が有る三陸には、「津波浸水想定区域ここまで」という看板が各所に有ります。
    しかし今回の津波は、その看板を超えた所にまで到達しています。
    固定観念にとらわれず、目の前で起こっている事実を踏まえて適切な判断を行う事の大切さ。
    私も強く主張して行きたいです。

    • 内田和成
    • 2011年 3月 28日

    yさんへ
    コメントありがとうございます。ブログも拝見しました。ご苦労様でした。被災地でのボランティア活動の難しさが伝わってきました。
    私も人間の持つ力を信じていますので、困難ではあると思いますが、被災地のひいては日本の再建はなると信じています。

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