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管鮑の交わり

中国のことわざに管鮑(かんぽう)の交わりというのがあります。きわめて仲がよい友達同士をさす言葉として使います。
斉の国の宰相になった管仲(かんちゅう)とその友人の鮑叔(ほうしゅく)とは幼なじみで大変仲が良かった。管仲が不遇の時代から、その将来性を買っていた鮑叔は彼をかばったり、理解を示していた。そして鮑叔が頂いている公子が斉の国の王様になったときに、その宰相(総理大臣)として、自分ではなく、新国王の政敵に味方していた管仲を推挙したことから、自分のことより友達のことを思う人格者として有名になりました。この故事から生まれたのが、有名の冒頭の言葉です。

なぜ、鮑叔が管仲を推薦したのかと言えば、もちろん友人思いというのもありますが、それ以上に管仲の方が自分より優れた総理大臣になる資格があり、斉の国が栄えると思ったからです。事実、管仲が宰相を務めた時代の斉の王様桓公(かんこう)は春秋の覇者となりました。

さて、本題です。この管仲は中国の歴史上最高の宰相と言われていますが、実は後継者選びには失敗し、その後の斉の国は乱れました。
私はリーダーの大事な役割の一つに、自分がリーダーを降りた後の組織を安泰にすることがあると思っています。もちろん、自分より同等あるいは自分以上の能力を持つものを後継者に選ぶこともそうですし、あるいは組織や制度を整備して組織の寿命を長く保つこともこれに入ります。
小説家の塩野七生さんが書いたローマ人の物語を読むと、ローマ帝国の優れたリーダー(皇帝)達は、後者の術に長けていたのだなと言うことがよく分かります。これについては、別途機会を見つけて述べます。

後継者育成や引退後の国政を盤石にするという意味では、管仲という優れたリーダーを送り出した鮑叔の方が、管仲よりは優れたリーダーだったといえるのではないかと思うのです。
要するに歴史上最高の宰相を指名した鮑叔こそ、最高のリーダーだったのではないでしょうか。

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コメント

    • リンリン
    • 2008年 2月 09日

    内田先生、先日からの連投で失礼します。歴史好きなもので発言したくなりました。
    先生が書かれたのは私たちが小学校で古文で勉強する中国歴史に有名なお話です。改めて考えると、管仲は恐らく非常に客観認知力(自分の能力と鮑叔牙の能力、そして大きい国の組織を統率する斉桓公の宰相として求められる力)、大局観(個人の名誉より国のためを考える大きい器)、素晴らしい人格を持つ人物だと私は思います。しかし、個人的には私はリーダーは組織を引っ張ってビジョンを実現するものだと思いますので、管仲のほうがよりリーダー的存在だと考えます。
    しかし、管仲には難しい現実もあって、ローマのリーダー組織と違って、あくまでも血統伝承される王をサポートする立場、助言しかできません。いかに王に忠実に考える上げることができますが、王がその考えを採用してくれなければそれで終わり、それは中国文人が背負う儒教の十字架かもしれません。
    同じ問題が千年後の諸葛孔明でも解決ができず、彼が死んで王が倒れてしまいました。話によれば劉備がなくなる前に彼に「もしわが子が無能のようであればあなたが取って代わっていい」と言ったですが、諸葛孔明は怖くて呼吸さえできず「そんなこと死んでも考えることがない」と返したようです。
    自分の中で枠を作ってそれ以上のことを見えない化にして補佐役でいかにもよく働く、という意味では、彼らは所詮リーダーとは言えずに、マネジャーに終わっているのでしょうか。

    • 内田和成
    • 2008年 2月 12日

    リンリンへ
    さすが中国、早速のレスポンスありがとう。
    私は管仲が名宰相ではないと言うつもりはなく、後継者を選ぶことの重要性と、その一点に関しては管仲はダメだったという話をしたかったのです。
    宰相が真のリーダーではなく、補佐役だという話は、ある意味その通りなんですが、名君の下でないと機能しない補佐役より、そこそこの器を名君にしてしまうのが真の宰相だと思います。逆に、宰相があまり目立って、実権を持ってしまうと国としては危険な症状なのだと思います。

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