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マイクロソフトはなぜグーグルを恐れるのか(下)

これまでのマイクロソフトの勝ちパターン、すなわち地上に存在するほとんどすべてのPCにウィンドウズを入れ、そこでマイクロソフトオフィスを使ってもらうというやり方が、通用しなくなる可能性を秘めているのがこのGoogle Docs&Spreadsheetsなのである。
余談ではあるが、昔ブラウザソフトにネットスケープという圧倒的シェアを誇ったソフトがあった。これを嫌ったマイクロソフトは、OSのウィンドウズに、無料でインターネット・エクスプローラーというブラウザーを搭載し、ネットスケープの駆逐に成功した。今頃になって無料にするのではなかったと後悔しているのではないだろうか?なぜなら、今後最もカギとなるソフトはブラウザーである可能性が高いからである。

最後にもう一つだけ話を付け加えると、このマイクロソフトとグーグルの戦いに極めて似た話が1990年代に起こっていた。それは、マイクロソフトとサン・マイクロシステムズの戦いだった。当時は、マイクロソフトはどんどんPCを高機能化し、そこに高機能のOSと重装備のアプリケーションソフトを乗っけて、高いお金を取ろうという考え方だった。それに猛然と異を唱えたのがサンマイクロで、彼らはPCを高機能化するのではなく、サーバーと呼ばれるPCを束ねるコンピュータを高機能化し、PCはクライアントと呼んで、必要なソフトだけサーバーからダウンロードして使えばよいという考え方であった。要するにセンターでほとんどすべての機能をカバーしPCの方は、出来るだけ軽く・安いもの(これをThin Clientと呼んだ)にすればよいというこである。これもソフトウエアメーカー対ハードウエアメーカーという異業種格闘技であった。結果はサンの負けに終わってしまったが、当時はソフトウエアメーカーとハードメーカーの戦いといっても、同じハードであるサーバーを強化するか、PCを強化するかという戦いであり、比較的分かりやすかったと思う。しかし、今回はPC側はリアルであるがGoogleがデータやソフトを置くウェブやインターネットというのは実態があってないようなものであるために、マイクロソフトとしてはとても戦いにくいのではないかと感じている。
いずれにしても、マイクロソフトがどんな逆襲に出るか楽しみである。この項はこれで終わりですが、是非皆さんの感想を聞かせてください。また、他にもマイクロソフトがグーグルを恐れる理由はいろいろあると思いますので、異業種格闘技という視点で意見を貰えるとうれしいです。

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コメント

    • k626
    • 2007年 2月 12日

    刺激的なテーマでしたので、早速Google Docs&Spreadsheetsを使ってみました。結論としては、Docs&Spreadsheetsは短期的にはMicrosoft Officeを脅かす存在にはなれないだろうと考えます。機能が不十分ですし、エラーが出るなど基本的な品質向上が必要だと感じました。
    しかし長期的に見ればテクノロジーというものは必ず向上して行くので、MS-Officeに遜色ないような機能をOn-Lineで、しかも無料で提供できたとしたらMSにとって大きな脅威になることは間違いありません。Docs&Spreadsheetsの優れている点は、内田先生がおっしゃるようにドキュメントがネット上で共有されているという、MS-Officeが持っていない付加価値です。単に無料であることが必ずしもユーザーにとって魅力にならないことは、Sun Microsystemsが肩入れしているOpenOfficeが全く普及しないことを見ても推測できます。
    ビジネスモデルがどこに落ち着くのかという点で見ますと、GoogleはこのDocs&Spreadsheetsを得意の無料モデルに移行できるかどうかが課題ですね。すぐに思いつくのはDocs&Spreadsheetsを無料提供する代わりに、AdSenceを表示するというもの。Googleは現在Gmailに広告を表示していますが、あのような形態になるのではないかと想像します。しかし私などは、プライベートな文書をメールでやりとりしているのに、そのテキストデータを勝手に分析されてAdSenceを表示されてしまうのは気持ち悪くて仕方ありません。ましてやOfficeはビジネス使用が中心でしょうから、いくらタダで使わせてくれるからといって、おいそれとビジネスパーソンが無料ソフトに移行するかどうかは、ちょっと疑わしく思っています。
    思い切って有料化するという選択肢もありますが、それもGoogle自身が進めてきた「web上のアプリケーションはすべて無料で利用できる」という思想教育が足を引っ張ってしまいユーザーの反発を招くでしょうから、普及の足かせとなるでしょう。
    一番ありそうなシナリオは、機能アップの上で無料モデルを始めたのはいいけれど、結局は価格弾力性に敏感に反応する特定層にしか普及しなくて、ちょっとしたMSに対する嫌がらせで終わる、というものです。検索連動型広告でたっぷり儲けているGoogleが、あえてMSの逆鱗に触れるようなことをする必要があるのかという疑問もあります。Googleが取りえる戦略オプションは他にもあるのですが、クドくなりますのでこの辺にて。

    • 内田和成
    • 2007年 2月 12日

    k626さんへ
    コメントありがとうございます。大変参考になりました。
    GoogleのDocs&Spreadsheetsがまだ実用に耐えないという話はその通りだと思います。私も、メモ代わりに使っており、万が一データが壊れたり、他へ漏れることがあってもあきらめがつくかトラブルにならないもののみを載せています。
    私もGoogleがDocs&Spreadsheetsだけで、マイクロソフト(MS)に対抗できるとは全く思っていません。しかし、Googleの強みはこうした新しいサービスが仮にかけ声倒れに終わったとして大して痛くない点にあると思います。Docs&Spreadsheets以外にもGMAIL,Web上のBookmark、Googleマップなど、これからのPCの使い方を示唆するものがたくさん含まれていて、どう化けるか分からないサービスがいろいろあるのがおもしろいですね。
    私がこのエッセイで最も言いたかったことは、実はグーグル全体のビジネスモデルがWeb上の広告(アドワーズ、アドセンス)である以上、マイクロソフトのソフトウェアを販売するビジネスとはルールが異なり、マイクロソフトは戦いにくいだろうなというものでした。もちろんバナー広告が下火になったと同じようにアドワーズやアドセンスに取って代わる広告モデル、特に効果的な販売促進モデルが登場する可能性も高く、グーグルが次世代の勝者になるかどうかは全く不明だと思います。

    • k626
    • 2007年 2月 13日

    こんばんは、内田先生にコメントいただけて光栄です。
    おっしゃる通り、Googleはインターネットという大海に生まれた突然変異体で、陸地の食物連鎖の頂点に立っていたMicrosoft(以下MS)もその急成長に手を出せません。去年あたりまでは異なる生存圏を持つ両社はにらみ合いを続けておりましたが、今年になってからは、まさに海の王者と陸の王者が海岸べりでつばぜり合いを演じている状態ですね。
    外野と致しましては、競争が激しくなって各社が良いサービスを低廉に届けてくれたらうれしいので、どちらも応援しております。

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