先日、こんなメールをいただきました。了解を得て、全文紹介します。2月16日にアカデミーヒルズで行った「論点思考」と題した講演の受講者の方です。
『先週金曜日の『Think!』提携講座:内田和成の論点思考を受講した小川と申します。
講義を受けて、本当に面白い講演だったと思い、終了後に名刺交換させていただいた者ですが、その時も、何がすばらしかったのかはっきりと言葉で表す事が出来ず、もやもやした気持ちが残っていました。
ところが、帰りの電車の中ではたと気がついて、是非報告したいと思ってメールさせていただきました。
私自身、よく考えてみると、かなり「右能タイプ」の人間で、個人的に重要な決断(就職、結婚から始まって、車の購入の決断に至るまで)は全て、直感的に行って来ました。ところが、仕事に関しては、「そんないい加減が事は許されない」、「網羅的、定量的、解析的」に検討して結論を出さなければならないという「強迫観念」に縛られて、潜在意識の中で「こんな無駄な事を」と思いながら、根性で仕事を進めていたのだという事に気づいたのです。
先生のお話を聞いて、心の中で共鳴するものを感じたのも、「右脳」の働きだと思いますが、質問コーナーで、「間違った方向に進む事もあるかもしれないが、まわりの経験豊かな人のアドバイスを受ける事も出来るし、この思考方法繰り返す事で正しい答えにたどり着く確率が高くなる」というお答えをいただき、ついに腑に落ちたのだと思います。
直感力(あるいは洞察力)は、いい加減な物ではなく、訓練を積む事で「鍛える」事ができるという事を教えていただき、本当にありがとうございます。
これからは、もっともっと、右脳を鍛える事に挑戦して行きたいと思います。
すばらしい講義をありがとうございました。』
私も小川さんに近いことをやってました。それはプライベートライフでは直感重視で暮らしているのに、仕事になると論理的でなくてはいけないと思いこみ、結構無理をしていたと思います。ある時から、直感を重視し、それを理論的に説明するように考えたり、あるいはどうやったら検証で出来るかを考えるようになって、楽になりました。楽になるというのは気持ちの上だけでなく仕事量も減りました。
皆さんはどうなんでしょう?
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「"直感"は経験の積み重ねから生まれるものである」
とするなら、それは意識をしていなくてもその人にとっては論理的なのだと思います。
表面上はステップを意識せずにゴールを出すのでショートカットしているように見えますが、無から何かが生まれるということはないと思います。
逆転の発想というものも、まず"+a"という答えがあって"-a"というものが生まれるのではないでしょうか?
つまり直感と思えるいきなり出てきたアイディアにも、そのアイディアに至った道筋は必ず存在して、他人にも説明することが可能だと思います。
TYDさんへ
直感を他人へ説明できるようになるのは結構高度なスキルが必要な気がしますが、それができたら素晴らしいですね。
私の場合でいえば、思いついた直感やアイデアを、その場で他人に納得いくように説明できるケースが1/3、しばらく考えればできるようになるのが1/3、いくら考えても説明できそうもないのが1/3といった感じでしょうか。
>直感を重視し、それを理論的に説明するように考えたり、あるいはどうやったら検証で出来るかを考えるようになって、楽になりました。
私の場合、直感で感じた事を理論武装したり、検証するプロセスって苦痛だったりします。
時間がかかっても、きちんと論拠を立てられたり、検証できればいいのですが、納まりのいいデータが見つけられなかったり、いろいろと試行錯誤を繰り返していくうちに、だんだんと直感に対する「自信」が無くなっていくことが多い気がします。
直感を立証していく能力(スキル?)も訓練を重ねていくと磨かれていくものなのでしょうか?
Aさんへ
直感を検証する能力は、経験と訓練の両方で強化されると思います。ただし、初めのうちは直感が間違っていることの方が多いと思いますので、それを無理矢理証明しようとするよりは、別の仮説を考える方がよいかもしれません。あるいは、自分で証明しようとせずに、筋の良さそうな人に自分の仮説が良いかどうか聞いてみるのも良いと思います。
お役に立てば幸いです。
内田先生、
オフィスで「直感と経験」について雑談しましたが、こちらに場所を移して議論を続けたいと思います。
内田先生のおっしゃることは、課題に取り組むときに、考えられる全てのことを細かく調べていたのでは効率が悪く実践的ではないので、直感(勘)を働かせて「それらしいもの」に当たるということなのだろうと理解しました。直感らしきものがあることには同感なのですが、これは何もないところから降って沸いてくるものではなく、経験に関係していると思うのです。私自身を振り返ってみると、まずは経験の中で物事に対する切り口を増やし、課題に向き合うときには、有効と考えられる切り口を組み合わせてきたように思います。言葉にするのが難しいのですが、直感が働いているのは後者、すなわち切り口を組み合わせている時なのかなと感じています。また、切り口の組み合わせをしているときには、これまた経験に基づいた、なんらかの論理が働いているようにも感じます。
仮に直感が経験から生まれるとすると、いくつかの問いが浮かんでくるのです。内田先生のコメントにもありましたが、同じだけの経験を積んでも、直感がよく働く人とうまく働かない人がいるのはなぜでしょうか。また、新規事業参入や、外部環境の急激な変化への適応を迫られているときなど、過去に経験したことがないような状況の中で直感を働かせるにはどうしたらよいのでしょうか。私としては、直感というのは、経験からの学習よって構築される能力であり、学習の仕方によって、その的中率や応用可能性に差がでてくるのではないかと考えています。このことを突き詰めていくことは、企業が経営を担う人材を効果的に育成する方法を考えるうえでも示唆があるように思われます。
内田先生やブログ読者の皆さんはどうお考えでしょうか?
蛭田さんへ
直球の投げかけ、ありがとうございます。
私も蛭田先生が仰るように、直感は経験によって、感度が増すと思います。しかし、そこには個人差があり、大して経験なくして勘が働く人もあれば、たくさん経験しているのに結局同じような失敗をする、すなわち勘が働かない人もいると思います。この場合、経験と個人差のどちらがどれくらい効くのかはよく分かりません。
また直感が働く場合には自分の引き出しがたくさんあった方が良いというのはその通りだと思うのですが、数ある引き出しのどれを空けるかもまた勘な気がします。
皆さんはこの議論をどう思いますか?
初めてコメントさせていただきます。
(いつも興味深く拝読させて頂いております)
>課題に取り組むときに、考えられる全てのことを細かく調べていたのでは効率が悪く実践的ではないので、直感(勘)を働かせて「それらしいもの」に当たるということなのだろうと理解しました。
私もこの部分には何の異論もございません。
しかし、ここの議論でなされているように「直感」は個人個人の重ねてきた経験による部分が大きいと思います。
つまり仮説思考は、論理思考がしっかりと身について初めて実践できるものなのではないかという事です。
仮説を立て、それを検証していく際の情報収集や仮説の真贋?の判断は論理思考が身についていなければできない事だと思うのです。
私は課題解決を行う際に、どうしても(後で気づく)誤った仮説を立ててしまい、時間をロスしてしまいます。
「全体」から「細部」へという情報収集の原則がしっかりと身に付いていない事も原因ではあると思いますが、まずは網羅的に調べまくる経験も必要なのではないかと感じております。
その経験を踏んで初めて、仮説思考が出来るようになるのではないかと思うのですが、内田先生はどうお考えですか?
たろさんへ
確かに論理思考がしっかりできていれば、仮説思考の精度も上がると思いますが、どちらかが出来てから残りの片方に取りかかると言うよりは、同時平行でやっていく方が、結局経験が早くたまっていくと思います。
仮説思考をやりながら、ロジックの甘さを反省し、より理屈の通った仮説を立て直すと言うことも必要でしょうし、逆にガチガチにイッシューツリーやMECE(漏れのないように網羅的にカバーする方法)でやっている人は、時々思い切り飛んだ発想で新しいアイデア・仮説を考える訓練をした方がよいと思います。
一個人の経験は限られているので、学習の密度を高める工夫が必要だと思います。私は、他の部署や事業との関連を考えるよう心がけています。たとえば、商品開発のプロジェクトを経験したとしましょう。そこでの意思決定は、技術の研究開発や生産、財務など他の部署のかかえる課題と関係しているかもしれません。また、ある事業でいままで外部から調達していた部品を内製するプロジェクトを経験したとしましょう。部品の内製化という意思決定は、他の事業のバリューチェーンに影響するかもしれません。ある部署や事業で最適と思われる意思決定は、いつも他の部署や事業にとって最適なものであるとは限りません。むしろ、相反することも多いはずです。組織の中のトレードオフを理解することは、視座を高め、視野を広げることにつながるように思います。皆さんは学習の密度を高めるためにどのような工夫をしているのでしょうか?
蛭田さんへ
コメントありがとうございます。
おっしゃっていることは、企業の中で行われる組織学習の話と組織間学習の話ととらえることが出来そうですね。
個人がいちいちゼロから学んでいたのでは、効率が上がらないので、誰かが学んだことを他の人が共有し、さらにそこから高めていけば組織の能力は格段に上がりますね。これはイトーヨーカ堂が優れた仕組みとカルチャーを持っていることで有名です。
一方で、組織と組織の間の学習あるいは協力はそんなに簡単なことではありません。これもコンサルティングの経験から言えることですが、組織の境界線にこそ改善の山が眠っています。なぜなら、野球の三遊間のようにどちらからアプローチしても限界があるために放って置かれることが多いのです。
あまり勘の話にはなりませんでしたね。ごめんなさい。