昨日紹介した柔らかなリーダーシップがなぜ良いのかと言えば、
①リーダーがすべて決めるのではなく、各自の自発性を尊重すると言うことは、すなわち一人一人に考えさせることになる。逆に言えば、現場や顧客接点で何か問題が生じたときや判断が必要なときに、現場が自分で考えて判断し、それがまた会社の方向性にそったものになっている可能性が高い。要するに反射神経(脊髄反射)で勝負できる。オペレーション仕事でマニュアル判断でよい場合別として、是々非々の判断が必要なときに全部本社、トップまで上がる企業に比べれば格段に変化対応スピードが速いだろう。あるいは顧客の満足度を高くできるとも言える。
②環境変化に対して強い
昨日も述べたように鋼の強さではなく、葦のようなものであるために強い風をかわすすべを知っており、ポキッと折れる心配がない。多少の逆風はやり過ごしたり、予想外の方向からの変化に対しても、柔軟に考えることが出来るリーダーである。
③後継者が育てやすい
カリスマ型の経営者をいだいたところは、その後の経営がうまく行かないことが多い。一つには前任者が偉大すぎて、後継者のなり手が見つからない。あるいは見つかったとしても、前の経営者と同じことをやろうとしてもうまくいかない。違うことをやっても以前のやり方が残像効果で残っており、うまく変われないなどの問題が生じる。
一方で、柔らかなリーダーシップの場合は、普通の人でも自分でも出来そうだと思い、なり手は比較的多く見つかる。あるいは、普通の経営者が経営しても大丈夫なような仕組みを作ることが可能である。ただし、柔らかなリーダーシップには柔らかなリーダーシップの難しさがあるので、誰が後継者になっても同じことが出来るとは限らない。
一方で、デメリットとしては、
①社員を強引にリードするのではなく、自発的に動き出すよう仕向けるのであるから、うまく回り出すまでにとても時間がかかる。
②ある程度の能力があり、自分で仕事を切り開いていこうという人間が少ないと、なかなかうまくいかない。そういう企業では、つべこべ言わずに俺の言うとおり働けの方がうまくいく場合がある。別の言い方をすれば、自律心のない社員が多いと成り立たないとも言える。
皆さんの意見を是非お聞かせください。
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アメリカの大企業では、特にポスト・カリスマとして、実務型で堅実なCEOが増えている感じがあります。HPのFiorinaからHurd、GEのWelchからImmelt、ディズニーのEisnerからIger、AIGのGreenbergからSullivanなど。
こうしたリーダーが内田さんのおっしゃるところの柔らかさと共通点があるのか、あるいは別のタイプなのか、考えてみようと思いました。
最近何かと話題になっている「リッツカールトン」は、柔らかなリーダーシップが実現されている好例ではないでしょうか。
クレドや20㌦の決裁権限付与等の仕組みも非常に優れていると思うのですが、何よりもスゴイのは、文化も人種も異なる世界中のリッツカールトンで、同様の取り組み行っており、ハイ・クオリティを実現させているコト。これって並大抵のことではないですよね。
僕は、大学生なりたての都内のとある大学に通っています。早稲田大学の先輩から先生のお話を伺って非常に興味を持ち意見をしたいと思います。
僕は先生の求めるリーダーシップについての意見はすばらしいものと思います。
やはり、トップに立つ人間は曖昧な表現かもしれませんが、おひとよしでかつ先生のおっしゃる反射神経が必要だと思います。
僕の意見ですが、僕はさらにリーダーに勝ち上がる野心が必要だと思いますが、どう思われますか?
先生のご意見を頂けると光栄ですが、若造の意見ですので、無視されても結構です。
Jさんへ
確かにカリスマ経営者の後には静かなリーダーあるいは全くタイプの違うリーダーが現れていますね。
何か分かったら是非教えてください。
名無しさんへ
そうですね。リッツカールトンのようにリーダーの顔が見えないのに、世界中で極めて高いレベルのサービスを維持できる組織・風土を作り上げ、率いるリーダーってどんな人なんでしょうか?
T.K.さんへ
コメントありがとう。
リーダーがお人好しと言えば、項羽と劉邦で有名な劉邦がその典型ですね。(司馬遼太郎の小説「項羽と劉邦」を読むとリーダーシップの勉強になります)
リーダーになるのに野心が必要かという質問ですが、私は野心よりはビジョンとトラスト(相手を信じること)が大事と思います。人を率いていくということはパワーもさることながら、「この人の言うことなら信じてみよう、つらいかもしれないがついて行こう」といった信頼を得ることが最も重要だと思っています。