先日、嶋口研究会にBCGOHBで百年コンサルティングの社長を務める鈴木貴博さんがやってきて、ロングテールについて講演してくれた。
いくつもの愉快な話をしてくれたが、一番印象に残ったのがロングテールのスケールカーブの話だった。
BCGにはエクスペリアンス・カーブという発明がある。日本語では経験曲線という言葉で知られている。簡単に言うと、ものをたくさん作ると経験効果によって一つ当たりのコストが下がっていくというものだ。カシオの電卓が、この効果をうまく使って低価格戦略で成功した話などが知られている。これとは別のコンセプトとして、スケールが大きくなると単位当たりコストが下がるという、いわゆるスケール効果もよく知られている。
この2つの話の話を合わせたような話なのだが、ちまたに知られているロングテールのグラフを想像して欲しい。横軸に商品の売れ行きの順位を取り、縦軸に売上(量)を取ると、急速に減少していくグラフが描かれる。この順位を、量に置き換えたとすると(ここがかなり強引ではあるが)、ちょうどエクスペリエンスカーブ(あるいはスケールカーブ)のようなグラフと見ることが出来る。そこで、このグラフを両対数グラフで描き直すというのがミソになる。このあたりは文章ではわかりにくいと思うので、読み飛ばしてもらって結構です。
そして、そのグラフの傾きを読み取るとおもしろいことが分かるというのが本題です。要するに現実世界ではあり得ない傾きになるというのが彼の発見というか目の付け所です。現実世界では、スケールカーブの傾きは50%が限界です。というのも、ものを2倍作ったときに、一つ当たりのコストが8割で済むときに80%カーブといいます。ということは50%カーブというのはモノを倍作ったときに一つ当たりのコストが半分になるということは、2個作っても1つの時と同じコストということですから、余計にかかる限界コストがゼロと言うことになるからです。すなわち作っても、作っても一切余分なコストがかからない魔法のような状態が50%カーブです。
ところが、ロングテールで傾きを測ると30数%になるというのが彼の発見です。現実世界で言えば、一匹200円のサンマが二匹だと300円というのはよくある話です。これは二匹飼うと一匹当たり150円になるので、スケールカーブが75%といいます。それに対して50%を割るというのは一匹200円のサンマが二匹買うと150円というのがネガティブスケールの世界です(この話が変なことに気がついてもらわないと話が先に進みません)と鈴木さんは説明していました。
そして、鈴木さんの解釈でもっともおもしろかったのが、こうした現象がなぜ起こるかを吉本の芸人と同じことだと言い切っていたことです。これ以上は、本人の著作権に引っかかりそうなので、説明しませんが、要するに売れない芸人をいくらたくさん集めても売れている芸人一人に及ばないと言うことです。これがロングテールの本質だそうです。
本当かどうか、信じるかどうかは別として、とってもおもしろい解釈でした。
そのうち本にすると言ってましたので、期待してます。
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