今日は神戸大学の石井先生がマーケティングにおける関係の重要性ついて講義してくれた。
その中で、消費者インサイトという言葉が出てきた。消費者が持っている当該商品に対するインサイト(洞察)のことだそうだ。企業は消費者の持つそのインサイトを理解することなしに、よい製品を提供したり、よいサービスを提供することは難しいという話だ。
この話を聞いていて、BCGでよく使われるユーザーシーンという言葉を思い出した。
ユーザーシーンというのは、どういう状況でその製品なりサービスを利用しているのかということである。
たとえば携帯電話のimodeなどのサービスは、どういう状況で使われることが多いかというと、ちょっとした空き時間に使われることが多い。いわゆるニッチ時間である。たとえば、電車を待つホーム、待ち合わせの時間、学校の休み時間などである。そうなると、接続に時間がかかる、メニューが複雑で目的のサイトまで到達するのが面倒くさいなどは致命的になる。一方で、目的地までの乗り換え案内や、近隣の飲食店情報などはきわめて有力なコンテンツになりうることがよく分かる。
石井先生の話の中にも、歯磨きのペーストの話が出てきた。あるメーカーが実際に家庭を訪問して、自社製品の使用状況を観察してみると、歯磨きチューブをコップなどに逆さまに挿して使っている家庭が多い。もちろん、横置きしておくと最後まで使い切るのが難しいためである。そこで、そのメーカーではチューブのふたを大きくして、頭を平らにして、縦置きができるようにしたという話である。
自社の製品が消費者やユーザーの間でどのように使われているのかを知らない、あるいは知っている思いこんでいる会社はきわめて危険だということである。
ということで、消費者インサイトとユーザーシーンというのは実は同じことだと悟った。皆さんからも、こんなユーザーシーンというのがあるというのを知っていれば、ぜひ教えてください。
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初めてコメントを入れさせて頂きます。
内田先生のブログはいつも私に多くの気付きを与えていただけるので楽しみに読ませて頂いております。
内田先生からご質問のありましたユーザーシーンに関して、ここ最近、既に消費者のユーザーシーンから成功したものとしては、ビジネスマンの多くが朝の出社後に朝食をとっているという実態を踏まえて製品化された朝専用コーヒー(ワンダモーニングショット)などがあげられると思います。
このワンダモーニングショットについては、企業側のリサーチに基づき、ほぼシナリオ通りに進んだ事例に思えますが、これとは少し異なり、企業が当初想定をしたところとは異なるところでブレイクした商品も結構多いのではなでしょうか。
例えば、少子化により縮小する菓子市場において、ガム市場の伸張に大きく貢献をしたボトルガムなどその良い事例だと思います。
聞くところによると、当初開発側としては主婦が購入し、家族全員で利用するシーンを想定して、主にスーパーでの販売を見込んでいたようですが、それ以上に社会人がオフィスや車内に置く需要も多く、当初想定をしていなかったコンビニエンスストアでも大きく伸びるヒット商品となったようです。
またマイクロソフトやヤマハが製品の開発途中において、試作や仕様を消費者に公開し、消費者のアイディアや意見を反映させながら製品化を行った事例なども、ユーザーシーンの把握につながる取組みだと思います。
仕事柄、色々な企業の経営者や幹部、社員の方々とお話する機会が多いのですが、本当の意味で、ユーザーシーンを理解した上で自社のビジネスモデルを構築、実践できている企業はまだまだ少ないように思います。話の中には、ユーザーニーズ、顧客志向といった言葉は頻繁に出てくるところですが、多くはプロダクトアウト的な企業側の勝手な思い込みでしかなく、ユーザーシーンまでを深く理解していないケースが多いのではと感じています。
益々厳しくなる競争市場において、企業が存続していくためにも、本当の意味での顧客視点に立ったユーザーの理解が必要になってくると思います。
内田先生からの質問の趣旨である、具体的なユーザーシーンからは少し離れてしまいましたが、私にとっても真の顧客の把握と、それを踏まえてのビジネスモデルの構築をどう進めていくのかは大きな研究のテーマです。
これからも内田先生のブログから自分自身が考えていく上での切り口を増やしていきたいと思っておりますのでよろしくお願い致します。
しょうたろうさんへ
コメントありがとうございます。確かにユーザーシーンが当初の想定とずれたが故に成功した商品というのは結構ありそうですね。男性用育毛剤が、多くの女性から女性が使っても大丈夫なのかという問い合わせを受けて、女性用を出したという話などもこれに当たるかもしれません。