日経新聞には記者の署名が入った記事や論説が良く載っているが、これにおもしろいものがある。
たとえば今日10月8日の朝刊には、9面の『経営の視点』というコラムに編集委員の小柳建彦氏が、『「ものづくり信仰」脱却の時』というタイトルで、日本の電機メーカーの経営が「工場でモノを作って売る」という発想から脱却できないのが、アメリカの企業や先進企業に比べて致命的であるという記事が載っていた。
欧米では、「製造業とは工場でモノを作る仕事」という概念が薄れていて、iPodのアップルなども生産をすべて外部委託しながら、高収益をあげていると主張している。
この記事の主張に賛成か反対か、納得するか不満を持つかは人によって様々であろう。私も部分的にはおもしろいが全面的に賛成しているわけではない。しかし、「これからのメーカーは同じ物をいかによく作るかではなく、どんな製品・サービスを創造するかで競い合わなければならない」という主張には賛意を覚える。そして、思わず切り抜いておこうと思ったことは間違いない。
署名記事がおもしろいのは、まず著者が自分の主張をはっきりと書いていることにある。署名なしの普通の記事は、何々筋の話としてとか、これによって競争がますます激しくなることが想定されるとか、「一体おまえは何を言いたいのか、あるいはそれは自分の意見なのか、ちまたの噂をまとめただけなのか」と聞きたくなるような主張のはっきりしない記事が多い。それに対して、署名記事には断定的ではっきりした主張がなされていることが多い。社説に近いものであるが、あれほど堅苦しくない。
もう一つのおもしろさは、著者の個性が浮かび上がってきて、そのうち自分のひいきの記者が出来ることである。私にも何人かいる。その人の署名が目に入ったときは、なるべく読むようにして、あああの人はこんな見方をしているのかと参考にしている。これからは小柳建彦にも注目していこう。
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