これから多くの企業で2009年度の採用活動が始まる。その際に、有名校の出身学生ほど大企業に就職が有利と言うことは、大企業は実績、すなわちこれまでの学業成績・クラブ活動歴など、で採用をしているのであろうか。それとも、本音で将来性を判断して、ポテンシャルに基づく採用をしているのであろうか。
企業側はポテンシャル採用をした結果として、たまたま有名大学が多くなっていると説明するのだが、それが本当かどうかは検証できていないし、多くの人は実は信じていないのではないか。
さらにいったん採用した学生、すなわち社員の人事考課も実績、すなわち単年度の業績、で評価するのか、あるいは将来性で評価するのかという同じ問題が存在する。こちらは以前と違って、かなりの企業で将来性より実績を重視するように変わってきている気がする。
さらに踏み込んで企業における人材育成について考えてみると、どこの企業でも上司は「即戦略で使える部下」と「将来性はあるが、指導に手間がかかって当面は成績が上がりそうもない部下」の二人を選べるとしたら、前者を選ぶのではないか。ところが、企業の人材には即戦力ばかりはいないし、即戦力の人材からして、誰かがそうなるまで鍛えてくれたのだから即戦力なわけで、後者の人材を喜んであるいはいやいやでも育ててくれる人がいないと成り立たないことになる。
皆さんは自分の部門の目標達成が厳しい状況でも部下を育成することに時間が使えているだろうか?あるいはそんな部下ばかりを抱えて、育成に努力している上司は、会社から正しく評価されているであろうか。
何でこんなことを書いているかというと、内田ゼミもちょうど来年度のゼミ生を選考する時期に来ているからである。私はゼミ生を、成績よりはこれからどれだけ伸びるかで判断しているのであるが、それが正しくできているのかどうかというとまだ結果が出ていないだけに何とも言えない。内田ゼミはまだ卒業生を輩出していないし、彼らが社会人として実力を発揮し出すのもまだまだ先だとすれば、当面はこの問題をうちに秘めつつ選考を続けていくということになろう。
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難しい問題ですね…。
採用段階では、その人がどんな経験(成功体験)を積んできたのか、論理的な思考力があるか無いか、ということを面談で判断せざるを得ないので、将来性か即戦力かという評価軸ではないように思います。採用担当者の話では、ある程度の大学を出ていれば過去採用した人材から想定できるため、必然的に過去に実績のある大学からの採用が多くなるとのことでした。もちろん、キチンと論理立てて説明できるだけの地頭の良さというのは面接時に見抜くそうです。
逆に、企業では、入社後、人を育てる仕組みや教える人がいなくなってしまったということのほうが深刻です。その意味で即戦力を求めるという無いものねだりをしているだけかもしれません。
このことは、ワークプレイスラーニング、すなわち、”研修”と”仕事現場”における学習を連携させた学びの姿、に解決の糸口があるように思います。ワークプレイスラーニングについては、東京大学の中原先生のサイトに詳しいので、以下、9月に開催されたシンポジウムをご紹介いたします。
http://www.educetech.org/test2/
ともゆきさんへ
ワークスプレースラーニングのサイト見てみました。おもしろそうですね。
私は、企業が人を育てられなくなっている理由は大きく二つあると思っています。一つは仰るように中堅クラスの人不足で、自分のことに精一杯で、人を育てる余裕がないことです。もう一つの深刻な理由は、現在の上司の人たちがかつての勝ちパターンしか知らないために、パラダイムシフトの起きた現在に通用する新しい戦い方を知らないと言うことです。知らなければ教えるのは難しいのは当然のことです。
私も企業のミドルの育成プログラム作成にも携わっていますし、ビジネススクールでもミドルクラスの教育をやっています。ゆくゆくは経営者を作る教育をやりたいと思っていますので、こうした話題もこれから折に触れて取り上げていきたいと思っています。