今日の日経新聞スポーツ欄におもしろい記事があった。吉田誠一さんが書いたフットボールの熱源というコラムである。
アルゼンチンサッカーの育成部門で活躍し、今年の20歳以下の世界選手権でアルゼンチンを優勝に導いたコーチのウーゴ・トカリさんの話だ。
彼は、13年間アルゼンチンサッカー協会で選手の育成に携わり、その間世界を代表するフォワード(点を取るのが仕事)を数多く排出してきた名コーチである。ちなみにアルゼンチンの代表選手としては、メッシ、テベス、サビオリ、リケルメなど枚挙にいとまがない。
そのコーチが来日して、コーチングのワークショップが開かれたそうだ。その際に日本のコーチ陣から、「アルゼンチンにはストライカーを育てる特別のコーチ法があるのか」、「ずるがしこさはどうやって身につけるのか」などの質問が飛んだそうである。
ちょっと補足しておくと、日本サッカー界の中盤には同世代だけを見ても中田英寿をはじめとして、中村俊輔、小野伸二と世界に通用する選手がたくさん出てくるのに、点を取るフォワードとしては40年前の釜本邦茂を唯一の例外として世界に通用する選手が育たないというジレンマがある。そこで上記の質問になったというわけだ。
それに対して、トカリ氏は「それは選手が元々持っているものであったり、ストリートサッカーで自分でつかんだものであり、我々が教えられるものではない」と答えたそうである。
あるいは「試合で結果を出せなくても、変わったものを持っていたら、切り捨てずにチームに残しておくべきでしょう」、「指導者はマニュアルでなく、自分の勘を大切にして欲しい」と答えたという。
この記事を読んで、私は企業が人を育てるのにもかなり似た面があるなと感じた。優秀なビジネスマンを育てるために特別な研修とか指導法があると言うより、本来その人間が持っているものを如何に見つけ出して、切磋琢磨する機会を作ってやれるか。あるいは、実戦で学ぶ機会を用意してやれるかが重要だと言うことだろう。
これって、もしかしたらビジネススクールの効用を否定しているのかな・・・・?
それにしても最近の日経新聞は経済面や産業面よりスポーツ面の方がビジネスに役立つ記事が多い。日経新聞の企業関係の記事がつまらないと言うより、私の感性がより感覚的な事柄やプロフェッショナルの育成といったものに向かっているせいだろうが・・・。
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内田先生の興味の対象がプロフェショナルの育成に向かっているとのことですが、仕事人生において、30代、40代、50代と、どのような心の変遷をたどられましたか?差し支えなければ、是非お伺いしたいです。
日経のスポーツ欄が面白いとのご意見ですが、極言すれば、「日経はスポーツ欄しか面白くない」と言ってみたいところです。
私も日経を自宅で取っていますが、朝刊はスポーツ面の署名入り記事と最終面の文化面の2箇所で朝刊全体の価値の3分の2は占めていると思います。
あと、水曜と土曜の夕刊の真ん中の文化面が曲者です。食文化、民俗伝承、鉄道などを軸に日本と世界の僻地をたどる記事の数々もうなりを禁じえません。夕刊のスポーツコラムにも味があります。
朝刊・夕刊とも、経済面、産業面はといえば、実質的な独占状態なのにあの程度の記事し書けないので、最初から期待していません。
義堂さんへ
30代は自分の力をつけることに精一杯でした。早くプロフェッショナルとして一人前になりたい、あるいは認められたいという思いが強かったです。
40代というのは、コンサルタントとしてパートナーになっていましたので、自分一人ではなくチームの責任者・組織の責任者として仕事をしていました。そうなると、自分が良い仕事をしたかどうかより、チームとして良い仕事が出来るかあるいはそのためにはどうしたらよいか、さらには顧客が成功するためにはどうしたら良いかというのが関心でした。顧客の成功が自分の勲章と思うようになったのがこの頃です。
50代に入ると、コンサル現役もそういつまでも続けられないことに気がつき、自分の持っているスキルや考えを若い人に少しでも多く伝えたいと思うようになりました。それと同時に、次世代の経営者を如何に育成するかということにも関心が深まり、それがビジネススクールの教授に転身した理由でもあります。
城南五山さん
コメントありがとうございます。
ユニークなハンドルネームですが、どういう由来なのでしょう?
また、日経新聞について、企業面の記事は世の中で起きている事象を把握するという意味では、役に立つと思ってますし、結構ヒントももらっています。
但し、最近の若い人から見るとネットのニュースの方が無料でかつ迅速、しかも広い範囲に及んでいると言うことで役に立つのかもしれませんね。
内田先生、さっそくレス有難うございました。
城南五山とは、五反田・品川エリアにある高級邸宅地である、花房山、池田山、島津山、八つ山、御殿山の5箇所の台地の総称です。
住居表示により「東五反田何丁目」という無味乾燥、歴史も伝統も感じさせない住所になってしまいましたが、現地を歩くといかにも数百坪クラスの邸宅が並んでいます。
世田谷区などの田舎(旧市街地ではない農村)を「山の手」などと勘違いしているマスコミなどが多いので、ハンドルネームにしました。(って、理屈になってませんが、、、)