昨日、日本マーケティング協会主催のアジア・マーケティング経営者会議のパネルディスカッションでモデレータを務めてきた。
メンバーは、味の素で中国・アジア事業に責任を持つ長町氏、キヤノンの中国アジア・マーケティング社長の小澤氏、資生堂中国事業部長の高森氏の3名と私だ。
アジア、とりわけ中国で日本企業がマーケティングを成功するためのカギについて話をしてもらったが、大変おもしろかった。モデレータが自分でおもしろかったと言うのもおかしいが、メンバーが優秀だったのとモデレータのうまい進行(自画自賛)のおかげで、雑誌・新聞あるいは普通のスピーチなどでは聞けないようなvividな話が聞けた。特に現地で実際にビジネスをやっている企業ならではの話が飛び出していろいろと勉強になるパネルディスカッションだった。
例えばキヤノンではそれまで中国では英語名のCanonをブランドとして使っていたが、それが読めるのは全国民の1割もいないことが分かってから中国語のブランド名「佳能」を併記するようになったそうである。格好悪いし、グローバルブランドの教科書(セオリー)には反するが、ブランドイメージを云々する前に知ってもらう(認知度を上げる)ことが肝心だという話などは、実践は教科書通りには行かないと言うことがよく分かって、大変興味深かった。
あるいは資生堂さんの広告やモデルを時系列で見ていくと中国人女性の美が洗練されていく度合いがはっきり分かるという話を女性誌の表紙とポスターを使って見せてもらうと、なるほどなという感じだった。(それにしても中国人モデルはきれいだな。)
また、ローカルの組織のマネジメントに関しても、優秀なローカル人材の活用や維持については各社とも悩みが多いと言う話が出たが、これは既によく知られた話である。
一方で、個人的におもしろいと思った話は、言語の話だ。欧米外資系では社内はすべて英語に統一されているので、コミュニケーション上の問題や不満は比較的起こりにくい。それに対して、日系企業では日本語(幹部に日本人が多いので日本人同士+日本語の分かる幹部)、英語(ローカルスタッフと日本人幹部のコミュニケーション)、中国語(ローカルスタッフ同士)が入り乱れているので、コミュニケーション上の課題あるいは不満が多いという話はウーンとうなる話だった。
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ローカルの生放送をさせて頂きます(笑)。
キャノンのお話について一言を言わせて頂きます。上海・北京と広州等の中国の大都市ではCanonとかSONYとか英語ブランドを言うと一部の人が分かるのですが、他の都市では、中国語化されたブランド名を示さなければ、分からない人がほとんどだと思います。
日本での話と同じかもしれませんが、宣伝する際に外国のブランドは必ず中国語化にしなければなりません。トヨタでもメインブランドのTOYOTAを「丰田」に、サブブランドのCROWNを「皇冠」に、PRIUSを「普鋭斯」にしてメディア等に出しています。
ローカル人材の活用・維持については、中国では、日本企業がローカル人材を重視していないと私が思います。1つの証拠としては、マネジメントチームにはローカルスタッフの顔が少ないことです。また、給与に関しても欧米系の企業にぜんぜん比べられなりません(日本でも一緒かもしれませんが、日本の現地企業の従業員の給与が外資系のに負けってしまうことが多いと感じています)。
ローカルマネジメントメンバーを維持し、モチベーションを上げるための打ち手が2つ考えられます。
まずは権限を譲ること。というのは、現地組織のマネジャー、副部長、部長、副総経理(副社長)ひいては総経理(社長)をローカルスタッフに任せていく。
それから、欧米系企業に比べ、競争力がある給与及び上昇率を現地スタッフにあげること。
ところが、中国人スタッフに権限を譲すことはまず不可能だと思います。
ローカルの組織では、中国人が社長になるなんかは夢みないな話です。部長、課長クラスのポジションでも中国人スタッフが少ないです。
多分韓国企業と中国企業にも同じことを言えるかもしれません。
それがアジア企業に共通の悪い根性?
ところで、キャノンと資生堂はいずれも立派な(exellent)企業ですが、絶対ローカル化のよい企業ではないと思います。
中国では、ローカル人材の活用に関しては、やっはり欧米系の企業が日系企業を相当上回っています。しかし、欧米系の企業が権限を現地スタッフに譲ったり、高い給料を上げたりする一方、目標達成できないならスタッフがOUTされる可能性も日系企業のスタッフより高いです。
日系企業と欧米系企業について、どっちがいいか一言で言い切れませんが、中国の大卒就職人気企業には日系企業が少なく、欧米企業が圧倒的というのが事実・現状です。日本企業の幹部たちが反省すべきではないかと思います。
崔さんへ
コメントありがとう。さすがに地元からの実況中継だけ会って、迫力ありますね。
ブランド名は日本では以前はカタカナを使う企業が多かったですが、今はそのまま英語で通すところも増えてきました。ロゴはグローバルで統一、但し社名や資料にはカタカナというのが多いかな。
日本企業が中国で地元人材の活用が下手な話はよく聞きます。崔さんの話を聞いても改善の余地は多そうですね。
一つ、素朴な疑問です。日本企業から能力主義の欧米企業に移った人はその後幸せにその企業に居続けているのでしょうか?また、辞めてどこかに行ってしまっているのではと、心配しています。
ところで、早稲田ビジネススクール出身のリンリンには会いましたか?あなたに会うのを楽しみにしてましたよ。
内田先生へ
リンリンさんには、来週お会いする予定です。私も楽しみにしております。
さて、私が知っている限り、日本企業から欧米企業に移った人はほとんどモチベーションが高くなったようです。私がいる会社でも欧米企業に移った人には、移ったことがよかったと思う人が多いようです。
中国では、欧米企業から日本企業とか中国企業への転職は難しくないが、日本企業から欧米企業に移ることはとても難しいです。欧米企業の人事マネージャは送られた経歴書をスキャンしながら面接候補者を選ぶときに「この人は日本企業出身ですから、だめだ」というほどです。それに対して、日本企業の人事マネジャーひいては課長・部長さんたちは「この人は欧米企業の出身ですから、きっと能力があるでしょう」と思いながら、面接を呼んでくるのです。
そのゆえか、今の中国の若い人は日本企業に就職したくなくなっているようです。この現象は、日本での多くの方に批判された所謂中国の「反日」教育には、根本的な関係がないと私が判断しております。今の中国の若い人はやはり自分の将来的な競争力に気になりますので、できる限り自分の競争力を鍛えてくれる会社に就職したいわけです。
取り急ぎご参考まで
崔さんへ
日本と日本企業は、今後も中国とは協力し合いながらやっていかなければいけないのに、道は遠いようですね。
私がちょっと疑問に思っているのは、非日系の外資系に移った中国の人が必ずしみ一つの企業で長く働かずに次々と他の企業に移ったり、自分で起業したりしているような気がして、外資系といえども優秀な中国人を長く雇い続けることができていないのではないかという疑問です。
先生の仰る通りです。外資系企業に移っても、また他の企業のもっといいポジションへ、もしくは起業、という中国人タレントは確かに多いです。自分の夢があるとか、自分がこのままでは前途ないと判断するとか、色々な理由が考えられます。日本人タレントの場合でも一緒だと思いますが、いかがでしょうか。
ちなみに、いまやもう他人・他社の協力を得ないと成功できない世界になりつつあります。そこで、企業はどうすれば協力を得られるかを考えながら、どうすればローカル市場の顧客にこの商品(会社)が私のこと・私の気持ちをよく理解してくれるというふうに好感を持たることができるか、どうすれば顧客の購買行動に繋げるかというビジネスの原点を常に考えることも必要となると思います。