久しぶりに読み応えのある本を読みました。石井淳蔵先生の「ビジネス・インサイト」(岩波新書)です。
一言で言えば、成功した企業では、経営者が当たり前のことをやり続けて成功したり、既存のやり方の延長から新しい事業が始まるのではなく、どこかで飛躍して初めて事業は発展を遂げたり変質を遂げたりする。こうした経営者の飛躍はどこから生まれるのかと言うことを科学的に解明するとどうなるかを述べてある書である。
難しいがおもしろい、アカデミックに見えるが経営に対する含蓄に富んでいる。
キーワードは事象(物)への棲み込み(dwell in)である。一言で説明するのは大変難しいが、私の理解したところで言えば、学者のように客観的に眺めるわけでもなければ、自分の主観で見るのとも違う。相手(もの)へ入り込んで、相手の立場で眺めることで新しい発想やビジネスが見えてくると言うことだ。それをポランニーという哲学者の言葉で「棲み込む」と言うらしい。
私がひらめきや右脳を大事にしろと主張するのに対して、石井先生はひらめきやジャンプあるいはインサイトがどうして生まれるのかを一所懸命解き明かそうとしている。
大変示唆に富んだ本だ。久々に脳みその奥深いところまでたっぷり刺激を受けた本で、現時点の本年度ベストワンである。
私の書いた「スパークする思考」は石井先生の本のようにアカデミックではないが、私の本に対するアンサーソングを書いていただいたような気もしてうれしい。
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心の師と勝手に思っている石井先生の本はすべて読んでいる。今回「ビジネスインサイト」は読むのが遅れた。読んでいると、なぜか、内田さんの「スパークする思考」を念頭に置きながら読んでいた。何とか「スパークする思考」に棲み込みを図ったが、私個人の能力不足でまだまだだ。ビジネスインサイトと「スパークする思考」は奥深いところでつながっている。
今出M21星雲さんへ
石井先生の本は決してやさしくないですが、本質をついた素晴らしいものが多いですね。
もちろん本だけでなく、ご本人も尊敬しています。
いつかスパークする思考に棲み込みを果たせたあなたにお会いしたいですね。