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将軍に学ぶリーダーシップ

以前に読んだ本だが、最近読み直してやはりリーダーシップに役立つなと思った本が松村劭(「つとむ」と読むらしいが初めて見た漢字だ)さんの「名将たちの指揮と戦略」PHP新書だ。
自衛隊で参謀をやっていた人らしく、古今の軍事や戦争に関する本や文献の中からリーダーシップにかかわる名言や金言を抜き出して、それを組み立てただけで本にしたというユニークな構成だ。

20091207meishotachi

その中で、いくつか印象に残った言葉を紹介しておく。まずはナポレオンから、
「戦闘において、ほんの少しの機動が決定的な効果を上げて勝利に結びつく瞬間がある。それはコップに一滴のしずくをたらせば、コップから水が溢れ出す瞬間に似ている。」
このくだりには著者の解説がついていて、勝敗の分かれ道は前線にいないとつかむことが出来ないと言った上で、こうも言っている。「逆に、勝敗分岐点が見えずに押し切られたときは全滅である。過去の人生に敗北の経験のないお坊ちゃま指揮官やエリート指揮官は、敗北する勝敗分岐点を見切ることが出来ずに全滅するのが歴史のシナリオである。」出来る指揮官は、勝敗分岐点を感じたら、速やかに撤退するそうである。
昔の武士でも、竹刀で練習しかしたことのないものと、実際に人を切ったことがあるものの違いを読んだことがあるが、同じような話だな。
ビジネススクール出身者はこうならないように気をつけないと・・・。 

次に、アメリカ陸軍のオマール・ブラッドレイ大将の言葉
「部下の生命の価値を無視するか、逆に損害の試練に苦しむ人は指揮官不適である。人命を死地に投入することには慎重でなければならないが、指揮官は作戦の終わりまで発生する損害を少なくする知識と、積み重なる損害を直視して耐える鋼鉄の神経を持っていなければならない。指揮官は損害によって戦略目標を見失う危険に常に曝されている。戦略目標を見失えば、戦争は長引き、いっそう多くの損害が発生するのだ。」
何となく、古巣のJALの再建問題のアドバイスを聞いているような・・・。

忠誠(Loyalty)というタイトルの項で、英国のバジル・ハート退役大尉の言葉
「優れた将校は、自分の直上指揮官に対する忠誠よりも、もっと高いところに忠誠でなければならない。それは軍全体であり、国家である。国家は政権と軍隊と国民から成り立つが、政権はしばしば権力抗争で変動するので、注意していないと軍隊を権力抗争のために私物化しようとする傾向がある。それゆえ、将校は政権に対して忠誠である必要はさらさらなく、冷静かつ客観的に観察しておけばよい。国家に対する将校の忠誠とは、軍全体と国民に対する忠誠である。」
軍と国家を企業、国民を社員、そして政権を経営者、将校を自分に置き換えると企業人としてのあり方を示唆しているように思えるが、現実には貫き通すのが難しいだろうなと思う。

リーダーの育成についても、英国の元帥だったアーチバルト・ウェーベルのこんな言葉が載っている。
「平時における最良の将校は、戦時における最良の将校である必要性はない。それどころか平時において戦時向きの性格は邪魔なのだ。さらに平時において、どの人材が戦時向きかを見分けることは難しい。兵舎において全く面倒な男が、ときどき戦時での真珠になる。」
これも現在の日本の企業が直面している課題を言い当てている。これまで、順調に来た企業ほど、危機に強いあるいは改革の出来るリーダーを育ててきていないのだ。あるいはどうやって育てたらよいか分からないと言った方が適切かも知れない。なぜなら平時のリーダーが戦時のリーダーを手なりで育てられると考える方が不自然である。

リーダーの資質については前述ハート退役大尉も、
「"実行の可能性についてのセンス"つまり戦術的、兵站支援的に実行可能なことと不可能なことをはっきりと見分ける能力が必要である」と語っている。
私も経営者に大事な資質が、解のある問題を解くことであり、解けない問題を解くのは学者に任せておけばいいと言うのが持論であるから、大いに頷ける。

ということで、軍事に関する本でありながら、リーダーについて学ぶことが出来る有意義な本です。問題意識を持って読めば学ぶところの多い本ですが、読み物としておもしろいかと言われればノーです。

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