前回の続きで、カメラ業界の異業種格闘技をバリューチェーンで見てみよう。
使い捨てカメラの次に起こった第2弾の変化が、通称ミニラボと呼ばれる技術革新である。この結果、従来は写真の現像といえば早くて丸一日、だいたい2日はかかっていたものが30分から1時間で出来るようになってしまった。そのからくりは、きわめて小型のフイルム現像&焼き付けの機械が低価格で提供されたことにある。その結果、従来当たり前だった、町のクリーニングや小売店、CVSなど数多くの現像取次所から集めた撮影済みのフイルムを大規模な現像所に集めてそこで現像・焼き付け後に取次所に戻すというプロセスが全く不要になってしまった。町のそこかしこに置かれた間口数メートルの小さな店舗の中で現像から焼き付けまで、それも30分程度でこなすことが出来るようになったためである。
取り次ぎと現像所が不要になってしまった。消費者サイドの利便性は増したが、現像所やDPEの取り次ぎはシェアを大きく減らすことになった。
第3弾の変化は、皆さんの想像通り、デジタルカメラ(デジカメ)の登場である。これはいろいろな意味で革命的な変化で、カメラ業界がガラガラポンで変わってしまった。
まずカメラがアナログからデジタルに変わり、その結果フイルムが不要になってしまった。そしてフイルム代わりに使われるのが何度も使用可能なメモリーカードである。この結果、従来のカメラメーカーとは全く異なる業界の電機業界から多数の新規参入が起きた。カシオ、ソニー、松下などである。
さらに現像も大きく変わった。一言で言えば現像が不要になってしまったのである。また焼き付けはパソコンとプリンタを使って自分でやるのが普通になり、現像所に頼むのは少数派になってしまった。さらに、もっと進んだ使い方としては、一度もプリントせずにパソコンに保存したままで必要なときに画面で見るだけといった方法も登場した。この場合はアルバムすら不要になってしまう。
私のように小さい頃からフイルムのカメラになじんで、写真といえば必ず印画紙に焼き付けし、アルバムに貼って保存するものと決めた人間からは、考えられない使い方である。
この段階になると、従来のカメラメーカーとフイルムメーカーが棲み分けて、現像所と一緒になって作っていたバリューチェーンは跡形もなくなり、メモリーカードメーカー、デジカメメーカー、プリンタメーカー、パソコンメーカーがバリューチェーンを構成するようになったのである。
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