20の引き出しの一つ「リーダーシップ」に入っているフォルダで「キャプテンの唇」というのにリクエストがありましたのでお答えします。
キャプテンの唇というのは、本の題名は忘れてしまったのですが、アメリカのコンピュータメーカーのデータゼネラルという会社を創業した社長の伝記に出ていた話をヒントに私がつくった話です。ちなみにデータゼネラルというのは、20年くらい前にはやったミニコンを作っていた会社で、当時はミニコン・ナンバーワン企業のDEC(IBMをしのぐエクセレントカンパニーとしてもてはやされていた会社です)を追いかけている大変元気な会社でした。今はどちらの会社も買収されてなくっています。
さて、本題です。リーダーシップの大事な要素の一つに部下を育てることがありますが、そのためには、部下に大事な仕事を任せて、経験させ、痛い目に遭わせるくらいで始めて本当の力がつくという考えがあります。この話をたとえ話にして、分かりやすくしたのが、「キャプテンの唇」です。と自分は思っています。
具体的には船長が航海士を育てるときに、本当に優れた船長というのは、平穏な大海原ではなく、危ない岩礁がたくさんあるような海であえて若い航海士に舵を任せるそうです。そして、実際に任せたらどんなに危ない操船をしようともぎりぎりまで彼に任せ、どうしても口出しをしたくなったら、実際に声を出す代わりに唇から血がにじみ出るくらい自分の唇をかみしめてがまんせよと言っています。もちろん、下手をすれば難破してしまうわけですから、最後の最後には自分で取って代わる必要もあるわけです。育てるために痛い目にあるまで任せて学習させることと、実際に船の安全を確保しないといけないこととのバランスをどこで取るかは、きわめて難しい問題です。でもこれが、下を育てるだけでなく、リーダーも育てることになると思います。
自分の経験でも、若い人あるいは次の人に任せたつもりが、結局気になって気になって、つい「ああしろ、こうしろ」、あるいは結局ここから先は自分に任せろという経営者がたくさんいます。これでは人は育ちません。でも任せた若い人が間違えると会社が危機に瀕します。次世代の経営者、あるいは自分の後任を育てるにはどうしたらよいかという議論のときにこの話を使います。
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