先月ソウルでマーケティング協会のエグゼクティブセミナーがあったときに、神戸大学の加護野先生が講師をしてくれた話は以前にも書いたがそのときの話で「並列列挙」という話が印象に残っている。
野球で、次に打席に立つバッターに「今日のピッチャーは直球が走っているぞ、それにカーブもよく曲がるし、シュートも切れている。だから気をつけろ」とアドバイスする監督がいるが、そんなものはバッターとしては言われても困るだけで何の役にも立たないと言う。要するにアクションプランに繋がらないからだという話があった。このようにあれもこれもと並列に言い立てる、ものをしっかり考えていない自然体の監督のことをを並列列挙型と呼ぶそうだ。
これに対して戦略型の監督は、たとえば「直球は走っているから捨てて、変化球を狙って行け」というような具体的なアドバイス、すなわち無駄にするものあるいは捨てるものを教えてくれるのが役に立つと言っている。納得いく話である。
同じような話であるが、BCGの先輩コンサルタントの島田隆さんから教わった言葉に「戦略とは捨てることなり」という話がある。BCGに入りたての頃で、戦略の要諦をとても簡単に言った言葉として印象に残っている。元は誰かアメリカのえらい人の言葉らしいが、私には島田さんの言葉として記憶にとどめられている。
コンサルタントは戦略・戦略と軽々しく言うが、新しい戦略・提案は極端に言えば誰にでも考えることができる。しかし、企業にとって本当に大事なことは、やらないこと(事業・商品・仕事の仕方・取引先・研究など・・・)を決めることで、これが実は難しいという話だ。当時の私は何でもかんでも、分析したり、新しいことを考えることが得意だったので、この話は新鮮であると同時に、非常に腑に落ちた記憶がある。
コンサルタントではなく経営者になればさらに捨てる意思決定というのは難しくなる。というのも経営者となるとその事業は商品に対する思い入れやそれに従事する人の顔が頭に浮かんでなかなかやめる決断ができないものだ。
ということで、加護野先生、勝手ながら、この並列列挙という言葉を、コピーライトは加護野先生という前提で私の20の引き出しに入れさせていただきます。
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教育系出版社に勤めるたかひろと申します。
「並列列挙ではなく戦略型に仕事を進めていく」というお話、ありがとうございました。
メンバーの企画へのフィードバックや、課の戦略構築にあたって、つい「並列列挙型」になっているのではないか? と。
例の野球監督のように、1から10まで修正ポイントをフィードバックして、一番重要なポイントが曖昧になっていたり、進行がおくれていたりするケースはないか?
何もかもやろうとして、「人・モノ・金」の資源配分にムリがでているのではないか?
今日からの連休で、改めて検討してみたいと思います。
ありがとうございました。
たかひろさんへ
経営で難しいことは、新しいことを始めることではなく、今までやっていたことをやめることです。これは、元三井物産副社長で、現在住宅金融公庫総裁の島田精一さんにずいぶん昔に教えていただきました。
BCGの先輩コンサルタントの島田さんに教わった「戦略とは捨てる異なり」と一緒に私の引き出しに入っています。
たかひろです。
ありがとうございました。
これまで十数年間にわたって、環境変化が比較的ゆるやかであった教育市場も大きな変化が訪れています。
これまでの「同じ業界内での勝負の仕方」が通用しなくなっています。または、変化に対しての新しい勝負の仕方をテストしていく必要がでてきています。
そうした中で「いままでやっていたことをやめる」「捨てる」ことの重要性がましています。
でも、先生が書かれたとおり「難しい」。周囲を巻き込む戦略を考えていくとき時に。
だからこそ、僕自身、引き出しに入れて意識していきたいなと思います。ありがとうございました。
たかひろさんへ
コンサルタントも捨てることが出来るようになれば一人前です。
何を捨てるかと言えば、課題であり、分析であり、戦略オプションであり、作業です。大胆に捨てることが出来る上に、さらに捨てなかったものの方に宝が残っていれば本物です。