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昭和16年夏の敗戦

表題は最近読んで感銘を受けた猪瀬直樹氏著のドキュメンタリー「日本人はなぜ戦争をしたか」という本のサブタイトルである。
この本は、実は8月にソウルで日本マーケティング協会のセミナーがあったときに神戸大学の加護野先生から推薦を受けた2冊の本のうちの1冊である。

Showa16

第2次世界大戦が起こる1年ほど前に、日本政府の肝いりで総力戦研究所というものが作られ、そこに役所や軍、民間から Best and Brightest が集められ、日本が欧米と戦争をしたらどうなるのかというシミュレーションが行われたというものである。そして、開戦前の昭和16年8月に日本は戦ったら必ず負けるという結論が出され、東条英機陸相の前でプレゼンテーションが行われていた。それにもかかわらず、日本は12月に戦争へと突入していった。それはなぜだったのかというテーマを扱ったドキュメンタリーである。

大変興味深く読んだのであるが、正直私自身でうまく評価できない珍しい本である。この本には猪瀬直樹さん自身の主張がないこともあって、本で何を言いたいのかがよく分からない。しかし、おもしろさは下手な小説顔負けであり、迫力もある。また、いろいろ考えさせるところが多い。また戦争に関するこれまでの不勉強を反省する良い契機ともなった。でも最後にSo what?(だからなんなのさ)と言いたくなるもどかしさがあった。

私は白黒はっきりしている方であるが、これくらい判断できない本も珍しい。しかし、人に勧めるかと言えば、イエスである。もし既に読んだ方がいたら、是非感想をお聞かせください。

ちなみに加護野先生お薦めのもう一冊は深田祐介の「黎明の世紀」と言う本である。これも同じく太平洋戦争さなかに開催されたアジアサミット「大東亜会議」を取り上げた本である。こちらも主役は東条英機であり、私の全く興味のなかった戦争時代におけるのアジア外交の舞台裏を知るには格好の本であった。こちらの方が読みやすいが、ずしりと来るのは「日本人はなぜ戦争をしたか」である。

Reimei

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