最近読んだ本でおもしろかったのが、関満博さんの書いたちくま新書「現場主義の知的生産法」だ。関さんはずいぶん前に「フルセット型産業構造を超えて」という名著を書いた人手、当時私は大学の先生でもない人がこんな知的に優れた本を書くのだと衝撃を受けた記憶が鮮烈に残っている。案の定というかその後、学者へ転身され、現在は一橋大学の商学研究科の教授である。
関さんは現場を徹底的に見ることで、現象の奥に潜む本質をあぶり出す学者だと思うが、その方法論を余すところなく紹介したのが本書である。
私も経営コンサルタントとして、現場の重要性は身にしみるほど知っており、自分でも極力現場に足を運んだつもりであるが、関さんの本を読んだ後では赤面の至りである。とにかく徹底している。
世間で広く行われている現地調査を痛烈に批判し、「彼らはお金を貰っている時だけ地元を「愛そう」としているのにすぎない。その地域をずっと「愛して」いかない限り、地域との信頼は深まらないのである。」と言い切る。
地域を顧客と置き換えればコンサルタントにも当てはまる名言である。我々コンサルタントも肝に銘ずるべきであろう。
あるいは、「工場調査を実施する場合、訪問してエールを交換した後、細かな話を聞く前に、作業現場、倉庫などを詳細に見ることから始めることが好ましい。実際の「作業現場」には実に多くのことが詰め込まれているのである。」
これもコンサルタントに当てはまるな・・・。
一方で、関さんのはちゃめちゃぶりがおもしろくて、読み物としても大いに楽しむことが出来た。
実はこの本でなく、「フルセット型産業構造を超えて」を是非読んでもらいたいと思っています。
補足
一橋の関先生のゼミのホームページを検索してみたら、いきなり「志のないものは去れ」と大書きされていたので驚いた。
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はじめまして。Makotoと申します。今、一橋ICSの英語のMBAコースに通っています(Hiroshi先生が働いているところです。)。戦略コンサルの仕事には興味があり、よくBlogを拝見しています。
以前は、ジェトロというところで働いており、そこへ転職するきっかけとなったのが、この関先生の本でした。関先生の現場アプローチは戦略コンサルタントのように論理的に行うものとは違うと思っていたため、内田さんのコメントにはちょっと驚きがあったのと、この本に5年前に出会うことができて本当に良かったと思いました。
なお、BBTで放送されている内田先生の番組の映像はMBA入学前に拝見させていただき、いろいろ勉強させていただきました。
何か機会があれば、内田先生にセミナー等でお話を聞きたいと思っていますが、なかなか機会がなく、まだできておりません。今後、内田先生のセミナー等に機会がありましたら、参加したいと思います。
これからも、Blogを拝見させていただきます。
今後とも、何卒、宜しくお願いします。
Makotoさんへ
コメントありがとうございます。
私も10数年前に関さんの新書「フルセット型産業構造を超えて」に出くわしたときにはぞくっとしました。
一般に知られていない人の名著に出会ったときは得した気分になりますね。
私の本やテレビ番組を見ていただいているようで、大変うれしいです。
今後もよろしくお願いします。
また菅野先生とは大の仲良しですので、よろしくお伝えください。
実際に関先生の講義をMBAコース(Hitotsubashi MBA Program in Kunitachi)で受講していました。現場主義が徹底されており、その知見の深さは衝撃的です。講義もホワイトボードに中国の地図を描き、探索ルートやその土地で出会った人たちの話、そこでのビジネスの話など、どれも知的好奇心をくすぐるものばかりでした。
現在、IT業界でマーケティング活動を行っております。業種としてはシステムインテグレーターやITコンサルの企業(内田先生も弊社のサービスを利用していたと聞いています。)で働いています。今後もこのBlogを拝見し、勉強させて頂きます。異業種競争戦略、購入しました。通勤時間を利用して熟読中です。
shinkstさんへ
コメントありがとうございます。関先生から直々に習ったのはうらやましいですね。
その後私はゼミ生を連れて、モンゴルに行ってきましたが、関さんの本に書いてあったことは大いに参考になったというか、ゼミ生全員に読ませてから行きました。
shinkstさんのブログも拝見しました。
今後ともよろしくお願いします。