今月発行のダイヤモンド社のPR誌に巻頭言を寄せた
内容は論点思考に書いたことの抜粋でもあるが、リーダーにとって必要な問題設定力の重要性を、「いま身につけるべきスキル『論点設定』」というタイトルで以下の内容である。
企業でも政治でも、課題解決というのは非常に重要な仕事である。この重要性は、誰もが認識している。したがって、問題解決の方法論というのは巷に数多く存在し、書籍も次々と発行されているし、ビジネススクールの講義科目もたくさん存在する。
一方で、どの問題を解くべきか、ということには、あまり関心が払われていない。より正確に言えば、「どうやって解くべき問題を決定するか」ということがおろそかになっていることが多い。学校なら先生が、企業でも上司が部下に課題を与えるため、自分で考える必要がない。つまり、問題を自分で設定しろという教育はそもそも受けていないのだ。
ところが、その上司の立場に立つと状況は一変する。誰も問題を出してくれないので、彼らは自分で考えなくてはならないのである。上に上がれば上がるほど、問題を教えてくれる人がいなくなる。経営者であれ政治家であれ、解くべき問題は自分で決めることになる。そこに一つの難しさがある。
問題解決を専門としているコンサルティング会社では、解決すべき問題のことを「論点」と呼ぶ。ところが、この論点を設定することが、実はもっとも難しい。論点さえ正しく設定すれば、問題解決は8割方終わったと言っても過言ではない。
では、なぜ論点設定が難しいのであろうか。それには様々な理由がある。たとえば経営者自身が、何が論点か分かっていないこともあれば、人によって論点が異なっているために誰の論点を解くべきかがはっきりしないこともある。複数の論点があって、相互に矛盾しているために、すべての論点を同時に解くことができないことも多い。
普天間基地問題などはよい例である。解くべきは地元の問題なのか、沖縄全体の問題なのか、日本の問題なのか。それも生活の問題を解くのか、安全保障の問題を解くのか、はたまたアメリカが抱える問題を解決するのか。つまり、論点が異なれば解決策も異なってくる。すべての論点を同時に解決できる万能の解決策など存在しない。
リーダーに求められる大事な資質として、意思決定できることと実行力が挙げられることが多いが、そもそも「どんな問題を解くのか」に難しさが潜んでいるのである。多くの経営者が凡庸のそしりを免れないのは、意思決定力や実行力がないというより、間違った論点に取り組んでいることが少なからずある、ということを認識すべきである。したがって、リーダーの大事な仕事は、どんな論点があるのかを整理したうえで、自分が取り組むべき論点を決定することとなる。
現物は書店などで無料配付しているようなので、是非手に取ってみてください。明日は、今月の表紙にもなっているコトバの戦略的志向について書こうと思っています。
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カギになる論点を絞り込むことこそ最重要の論点だったりしますね(笑)
「多くの経営者が凡庸のそしりを免れないのは、意思決定力や実行力がないというより、間違った論点に取り組んでいることが少なからずある、ということを認識すべきである。」には強く同意です。
間違った論点を解かせるべく有無を言わさない尻叩きが上手だったりすると、最悪です。。。
サラリーマンだと、「いや、それは論点そのものが間違っているのでは」とわかっていてもなかなか上司に言えないですからね。大抵の場合、言うと煙たがられ、文句言わず言われたとおりに作業する人の方が重用されてしまう。
そうやって"考え(られ)ない上司"が再生産される、というのが多くの組織にありがちな構造のように思います。
私が「トップマネジメントこそこの本を熟読すべき」と思う理由ははまさにこの点にあります。
鈴木さんへ
コメントありがとうございます。ブログも拝見しました。精力的に活動しているようですね。頑張ってください。