昨日取り上げた「日本人はなぜ戦争をしたか」に出てくる総力戦研究所というのは、よく考えるとビジネススクールに大変性格が似ている。というのも、20代後半から30代半ばのエリートを各役所、陸海軍、企業から選抜してもらい、1年間の期限付きで集中トレーニングを行う。カリキュラムも講義から始まって、研究会、机上演習、課題作業、視察旅行、講演と多岐にわたり、同じメンバーで朝から夕方、時に晩まで生活を共にする。目的も、単なる戦略や戦術の研究ではなく、経済力・軍事力、精神力などすべてを包含した仮想敵国との総力戦を想定した学習を行うのである。
その中でも机上演習というのはシミュレーションと呼んでもよいものであり、ビジネススクールのケーススタディと似たにおいがする。実際に企業活動で起こることを想定してクラスでディスカッションを行うケースメソッドに対して、机上演習では日本が取り巻く政治環境、経済力、軍事力などを総合的に勘案して戦争のシミュレーションを行うのである。
若いうちから、様々なバックグラウンドを持つエリートたちが、日頃の自分の職務を忘れ、国家という大所高所から、分析を行い、議論をし、意思決定をしていく。ただし、これは本物の意思決定ではなく、あくまでも演習である。国家を企業に置き換えれば、ビジネススクールの目的、正確そのものである。
ちなみに総力戦研究所では模擬内閣と称して実際の内閣と同じ役割を生徒に与え、教員から与えられた環境条件の中での、経済・戦争のシミュレーションを行っているが、これも私がビジネススクール時代にやったビジネスゲームに似ている。
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