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プロを育てるプロ

ある会社で、プロフェッショナルはかくあるべしという講演をしてきた。

ただし、今日はその話をしたいわけではなく、プロを育てるプロはどうあるべきかという話である。もちろん、プロは自分で育つものであって、育てられるものではないという考えもあるが、育つべく仕向けてやるのが上司や先輩の大事な役割だと思っている。

今月の私の履歴書は日本サッカー協会の会長を務めている川淵三郎氏だ。と言うより、元Jリーグのチェアマンだった川淵氏といった方が分かりやすいかもしれない。彼の波瀾万丈の人生がつづられていて、それはそれでおもしろいが、私にはスポーツを通じて、プロフェッショナルとは何かとか、リーダーシップとは何かが学べる点が一番おもしろい。

今日は日本サッカーの父と言われているクラマーコーチの話だった。高校の頃からサッカーに興味を持っていた私には、当時のクラマーさんと言えば神のような存在だったのだが、彼が日本サッカー界にもたらした話がおもしろくつづられている。
それまでの日本のサッカーと言えば、ただやたらにボールを追いかけ回すだけだったのが、その彼が日本選手にサッカーの基本技術や正しい理屈を教えたというのだ。
例えば、こんなことが書いてある。「当時の日本人コーチは『正確に蹴れ』と怒鳴るけれど『では、どうしたら』を教えられる人はわずかだった。クラマーさんは理論と実践を同時に示せる人だった。」

この理論と実践を両方教えられるかどうかと言うのが、コンサルティングの場合はきわめて重要である。
いくらコーチングが上手でも、コンサルティングの技が一流でないと、なかなか信用してもらえず、また尊敬が得られないのである。このあたりが普通のサラリーマンとの大きな違いかもしれない。自分では出来ない種類の仕事があったとしても、リーダー(管理職)として指揮が執れれば、それは一流のサラリーマンと見なすことが出来る。
それに対して、コンサルティングの世界は、そもそもコンサルティングという一種類の仕事すなわち技能しかないこともあって、そのコンサルティングという仕事で自分の技が見せられなければ下はついてこないのである。あるいは下の仕事を上が肩代わりしたり、より上手にこなすことが出来なければ一流のコンサルタントとは見なされないのである。「それは俺の専門でないの出来ない、やらない」、「オペレーションは俺の仕事でない、俺の仕事はマネジメントだ」は通用しないのである。やや飛躍するが山登りのリーダーや消防士のリーダーにも通じるのではないかと思う。

こうしたこともコンサルティング業界がもっと発展して、大きくなり、機能分化が起きてくると変わってくるのかも知れない。
別の言い方をすると、"職人の技で行われる仕事"が"産業"に変わるときに、機能分化(分業)が発生するのかも知れない。
個人的には大変興味深いテーマである。

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