JAL時代の私の同僚が私と同じ頃会社を辞めて、奥さんのお父さんの会社を継いだ。そのことは記憶していたのだが、その後20年どうなったか知らずにいたが最近久しぶりの再会を果たした。東証一部上場企業で12期連続で増配しているサトーという会社の会長兼CEOの藤田東久夫(とくお)さんである。彼は上場企業のトップを務めながら早稲田ビジネススクールで昨年博士号を取ったそうで、それだけでもすごいことである。NTTドコモの辻村常務も東工大からこの3月に博士号を取得したというから、忙しくて勉強できないというのは言い訳にならないのかもしれない。
さて、今日はその藤田氏の話である。彼は自分の経営者としての経験と早稲田大学のビジネススクールでの研究の成果を元にして「たった三行で会社は変わる」というタイトルの本を今年初めにダイヤモンド社から出版した。
その中にいくつかユニークなフレーズがあるので紹介しよう。p45に次のような文章がある、少し長いが引用する。『例えば何か社内に周知徹底しなくてはならないことがあるとする。中間経営層やサラリーマン経営者は、周知すべき対象者全員にそのことを伝える。むろん隈なく、そして詳しく伝えるだろう。だがその後は同じ話をくり返さない。なぜなら、「一度言えば分かる。分からなければ分からない奴が悪い、自分は周知徹底の仕事を遂行した」と考えるからである。「あ、また言っている」と思われるのを恥ずかしいとさえ思っている。企業家は違う。同じことを何度でもくり返す。一度言ったくらいで分かるはずがない。末端まで伝わったかどうか証拠が上がってくるまで執効にくり返す。相手が理解し、周知徹底がなされたかどうかが問題なのであって、自分が言ったかどうかは問題ではないからである。自分を賭けているのではなく、会社を賭けているからなのだ。』名文である。
BCGでも会社の中で何かを伝えようと思ったら、その対象となる人数の平方根(ルート)の数だけ、同じ話を繰り返さないと伝わらないという経験則をよく取り上げている。たとえば、10人の部下に自分の意図を浸透させようと思ったら、√10すなわち、3回はコミュニケーションを繰り返さないといけない。これがもし100人の組織習う√100=10になるので、10回コミュニケーションをすべきということになる。この場合はもちろん毎回全員に同じ話をするというわけではなく、100人の人に新しいことを浸透させようと思ったら、いろいろな機会を捕まえて、10回は同じ話をいろいろな人にことあるごとに伝える必要あるということになる。いずれにしても、経営者に必要なスキルの一つがしつこさであることは間違いないだろう。
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ご紹介頂いてからだいぶ時間が経ちましたが、ようやく読み終わりました。
よくある社長本とは一線を画す「濃い」内容で、小難しい経営学用語に逃げず、自分の言葉で書かれている点が非常に素晴らしいです。ただ、本の内容を考えるとタイトルでかなり損をしている気がします。
本文より、、、「物事をありのままに見て、なすべきことをなす」簡単な言葉ですが、実践するのは難しいですね
名無しさんへ
読後感、ありがとうございます。
藤田氏もこのブログを見ているとのことですので、喜んでくれると思います。
元々ドクター論文をベースにして書いたとのことですが、そうした小難しさがなく、そうだよねとうなずけるところやなるほどねと感心できるところが両方ある、良い本だと思います。
物事をありのままに見て、なすべき事をなすというのはイトーヨーカ堂の「当たり前のことを当たり前にやる」というのと通じるものがありそうです。
題名で損しているというのは、そうかも知れないし、柔らかい名前に惹かれて買う人もいると思いますので、私には何とも言えないところですね。